コラム

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  2. 精神科治療について

精神科治療について

不安障害を漢方薬で診るということ

 心療内科や精神科のクリニックを受診すると、各不安障害の診断のもとSSRIなどの抗うつ薬あるいは安定剤の治療を提案されることが多いと思いますが、当院では症状の程度が軽い場合には、漢方治療と心理療法を提案することがあります。

 今回は不安障害の方の漢方治療の特徴についてお話します。

 漢方治療というのは「パニック障害なら○○湯。効果なければ○○湯」のような病名処方ではなく、漢方特有の診断法によって方剤を選んでいきます。その際には、症状とは一見関係のないような問診や身体診察が重要になります。

 不安障害などのこころの症状であっても、もちろん身体の診察が必要になります。身体の診察というのは望診や脈診、腹診、舌診などです。なかでも、不安障害の方の場合には腹診が参考になることが多くあります。

 腹診では、腹部の全体的の力の程度はどうか、胸脇苦満という肋骨弓に沿った腹壁の異常緊張があるのか、精神的緊張が非常に強い方に見られやすい腹直筋拘攣があるのか、 交感神経の昂りや精神的な興奮を反映する腹部の大動脈拍動があるかどうか、胃部振水音があるかどうか、など確認します。

 そして、問診や他の身体所見も総合的に考慮して、生薬単位で何が必要かを頭の中で整理して、取捨選択していきます。

 具体的には、柴胡による和解薬が必要か、竜骨、牡蛎のような重鎮安神薬を含む必要があるのか、竜眼肉、酸棗仁、遠志などの寧心安神薬が配されるべきか、芍薬、甘草などによる鎮痙作用が必要か、水に関連した病態で利水薬を入れておかなければならないか、半夏、茯苓などの痰に対する生薬が必要か、厚朴、陳皮、薄荷、蘇葉、香附子などの理気薬が必要か、瘀血に対する桃仁、牡丹皮、川芎、芍薬が必要か、黄芩 、黄連、黄柏、山梔子などの気分の清熱が必要か、地黄や赤芍、牡丹皮などで血熱を冷ます必要があるか、など。

 このようなことを考えながら、どの方剤の組み合わせがよいのかを検討していきます。そして、可能であれば生薬数の少ない方剤を選びます。これは、生薬数の少ない方剤の方が一般的に効果が早く、効果も実感しやすいからです。

 具体的な詳しい弁証については、今後のコラムで、具体的な方剤名をあげて、触れていければと思っております。

2019.12.02 | パニック症・パニック障害・広場恐怖症,全般不安症・全般不安障害,医師のこと・医院のこと,心療内科,漢方内科,漢方治療について,社交不安症・社交不安障害(対人恐怖、社交恐怖、あがり症),精神科治療について

うつ病がちゃんとよくなっているのかがわかる指標ってあるんですか?

 今回は、うつ病がちゃんとよくなっているかがわかる指標についてです。

 うつ病にはHAM-D、MADRSなどの評価尺度がいくつかありますが、ここでは専門的なものではなく、うつ状態が改善していくとともに患者様自身が実感できるものいくつかを取り上げたいと思います。

 私が外来診療を行うなかでチェックしていく点は数多くありますが、そのなかでとくに代表的な3つについて触れていきます。

 治療経過中にいろいろな変化がでてきますが、そのなかでも実感しやすいものを一つ目に取り上げます。それは、「笑える」ということです。「笑う」というのはごく当たり前の行為ですが、この当然の行為がうつ状態ではできません。そのうえ、できてなかったことに長らく気が付いていないことがほとんどです。

 うつ病が少しよくなってきたあたりで、「お笑い番組を見て久しぶりに笑いました。笑ってから、ずっと笑えてなかったことに気が付きました。半年ぶりくらいは笑ってなかったのではないでしょうか」とおっしゃります。

 この「笑えた」という体験はご本人にとって、かなり実感しやすい指標で、明るい兆しになります。患者様にもちゃんと治療の効果がでてきることを身をもって体感してもらい、安心して引き続き治療を続けてもらうようにお伝えしていきます。

 次の指標も、笑えるようになるのと同じように比較的実感しやすいものです。

 新聞などの活字の文章を読んで、ちゃんと頭に入ってくるということです。これが結構重要で、うつ状態が改善して、頭がちゃんと回るようになってきた証拠です。とくに、元々新聞を読む日課があった方にはとても実感しやすく、「新聞などの活字の文章を読んで、頭に入ってくる」とおっしゃります。うつ状態が改善して、頭がちゃんと回るようになってきた証拠です。

 「ずっと眺めていただけだったけど、最近は新聞の記事がちゃんと頭に入るようになってきた」というふうによくなってくると、ご自宅で規則正しい生活をしてもらうだけなく、徐々に図書館などへの外出を促していく段階になってきます。この「文章を読んで頭に入る」というのは、治療者としてどの段階にあるのかを確認するうえでとても重要な通過点です。

 最後は、復職に向けての大事な指標です。うつ病は症状がよくなってからも、しばらく社会生活を休んでいた影響もあり、リハビリのような慣らし期間が必要になります。社会生活を営むという行為は脳も身体もずっと走り続けているようなものなので、しばらく社会生活を休んだあとに突然同じようなペースで走ろうと思っても当然そのようにはできません。

 そのため、徐々に脳も身体も慣らし運転をしながら、走りの調子を確認していくことが必要になります。週5日間仕事していたときのような生活を試験的に送ってみるのです。具体的には、通いやすい図書館に9時に行き、17時まで勉強や作業などをしてみます(もちろん昼休みはとります)。最初のうちは午前中で疲れて昼頃に帰っていても、徐々に慣れてくると9~17時で勉強や作業ができるようになってきます。

 このように、一日長時間脳を働かせても疲れなくなってきて、ご本人に「復職は大丈夫そう」という感覚がでてくると、主治医としては復職を視野に入れ、会社の復職基準などを確認しながら、就労可能の判断を行っていくことになります。

 今回は、うつ病の治療過程で、私が必ず確認する3つの指標をごく簡単ですがご紹介しました。 ちゃんと治療を行えば、笑えるようになり、頭が回るようになり、きっと仕事も以前のようにできるようになります。 今回の3つの指標によって、ご自身の状態がよくなっていることを捉える助けになればと思っております。


2019.10.25 | うつ病・躁うつ病,医師のこと・医院のこと,心療内科,精神科治療について

ストレスのせいだと片づける前に身体の検査をちゃんとしましたか?

 精神的な不調から、身体のだるさ、吐き気や胃もたれ、胃の痛み、下痢、便秘、頭痛や頭の重い感じ、ふらつき、めまい、胸の痛み、胸やけ、動悸、息切れ、熱っぽさなどの多様なからだの症状が出現することは多くありますが、ここで注意しなければいけないことがあります。

 それは、思い当たるストレスがあったとしても、身体の症状をそのストレスのせいだと片づけず、それぞれの臓器に問題がないかをまずは確かめる必要があることです。

 たとえば、胃が痛いときにストレスのせいだと思い込んでいて検査をせずに放置したせいで胃がんなどの重大な疾患の早期発見のチャンスを逃してしまったり。動悸がして不安強く心が休まらないといっても、ずっと精神科で治療しているがよくならならず、のちのち甲状腺機能亢進症であったことがわかったり。ほかにも、身体の病気だけれども、ちゃんと検査をしていないせいで、発見が遅れ、不利益を被るということは実はわりとあります。

  当院でも血液検査や心電図、睡眠時無呼吸の検査などでできる範囲の身体疾患は行っておりますので、糖尿病、肝疾患、腎疾患、甲状腺疾患、副甲状腺疾患、電解質異常、 不整脈、虚血性心疾患、睡眠時無呼吸症候群など、ある程度の身体疾患の早期発見は可能です。

 しかし、それ以外の疾患の精査(胃カメラ、大腸カメラ、CT検査、MRI検査、心臓カテーテル検査など)については、あらかじめ専門の診療科で相談されておいた方がよい場合がありますのでご理解いただければと思います。

 心療内科だけでなく、漢方内科の患者様も、それぞれの症状に対して、まず各診療科に受診され、治療の必要がないかをちゃんと調べておかれることをお勧めします。

2019.10.18 | 医師のこと・医院のこと,心療内科,漢方内科,漢方治療について,精神科全般,精神科治療について