コラム

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精神科治療について

双極性障害のうつ状態に用いられる代表的な気分安定作用のある薬

 双極性障害のうつ状態の治療についてです。表題には、気分安定薬ではなく、あえて気分安定作用のある薬と書きました。

 双極性障害の方は躁状態に比べうつ状態の期間が長いことが多く、うつ状態が長らく生活に支障を及ぼしてしまうことがあります。

 双極性障害のうつ状態にも昔は抗うつ薬も使われていましたが、最近では抗うつ薬のみでの治療は、躁転を引き起こしたり、かえって気分の波を荒げたりするため勧められていません。

 双極性障害のうつ状態にどんな薬を使うかというと、それが気分安定作用のある薬です。

 双極性障害のうつ状態には、クエチアピン(商品名セロクエル、ビプレッソ)、オランザピン(商品名ジプレキサ)、リチウム(商品名リーマス、炭酸リチウム)、ラモトリギン(商品名ラミクタール)などが勧められています。

 各薬剤についての代表的な注意点について簡単に触れます。 

 まず、気分安定薬の代表格であるリチウムです。これは躁状態にもうつ状態にも用いられ、双極性障害の治療では欠かすことのできない大事な薬です。とくに爽快なタイプの躁状態には第一選択で使うことの多い薬です。

 副作用としては、急性や慢性の中毒の危険性、胎児への催奇形性、母乳への移行などがあります。

 急性や慢性の中毒については定期的な血液検査や、中毒症状の早期発見、高齢者の方は定期的に休薬期間を設けるなどによって、多くを防ぐことができるので、大量服薬をしなければ、過剰に怖がる必要はありません。

 催奇形性は、将来妊娠の可能性がある若年女性には当然注意が必要ですので、妊娠の可能性がある方では避けなければいけません(私は、妊娠の予定がない若年女性に対しても、最初からはリチウムは使わないようにしています)。

 リチウムは、授乳中に注意しなければいけない精神科の薬として有名で、母乳にかなりの量が移行してしまいますので、授乳中は避けなければいけません。

 ほかにも、リチウムは手の震えや喉の渇きがでることがよくあります。これらは治療に適切な血中濃度でも出現することが多いので、副作用とのバランスを考えながら、薬の用量を調節する必要があります。

 

 次にラモトリギンについてです。ラモトリギンは、てんかんにも用いられる気分安定薬です。

 リチウムと違うのは、躁状態よりもうつ状態への効果が強いことです。

 胎児への催奇形性のリスクをあげないこともリチウムとは異なりますが、乳汁には移行するためリチウムと同じく母乳栄養は控えなければいけません。

 ラモトリギンの一番の注意点は、重篤な皮膚障害を起こす可能性があることです。

 この深刻な副作用は、非常に稀ですが、命にかかわることもあるので慎重にならなければいけません。

 薬を初期用量から徐々に増やしていく投与初期の段階で起こると言われています。添付文書の増量ルールも守っていても発生したという報告もあるので、厳重に注意しなければなりません(ちなみに、私は添付文書よりもさらにゆっくりと増量していくようにしています。治療用量まで増量するのに時間がかかってしまいますが)。とくに、バルプロ酸(商品名デパケン、セレニカ)と併用する場合には注意が必要です。

 ラモトリギンは増量するのに時間がかかりますが、他の薬で効果がなかった方がこの薬でうつ状態が目に見えてよくなることもしばしばありますえので、正しい知識で正しく怖がって治療に当たる必要があります。

 最後に、クエチアピンとオランザピンに触れたいと思います。

 両剤とも、元々は統合失調症などの幻覚妄想状態に使う薬でした。しかし、最近になって気分安定作用があることがわかってきたため、双極性障害にも用いられるようになってきています。

 長所としては、リチウムやラモトリギンのような重大な副作用がないことです。妊娠中にも授乳中にも明らかな悪影響はないと言われており、有益性が上回れば使用も可能です。

 しかし、欠点はあります。

 一つ目は、糖尿病を引き起こすことがあることです。 食欲が増えたり、太りやすくなったりして、血糖値が挙がりやすくなり、両剤とも糖尿病には禁忌(絶対使ってはいけない)となっています。定期的に、高血糖をきたしていないかをチェックしていく必要があります。

 二つ目は、眠気が出やすいことです。そのため、気分安定作用がでる用量まで増やせないことが多くあります。慣れてくると眠気は多少減ってきますが、それでも眠気が耐えられないというケースもどうしてもあります。

 3つ目は、ムズムズしてじっとしていられないアカシジアという副作用が出現することがあることです。このアカシジアが出た場合は、薬を減量したり、変えたり、副作用止めを追加しなければなりません。

 

 今日は、双極性障害のうつ状態の代表的な4つの治療薬の、代表的な特徴について触れました。

 薬剤によって副作用が異なり、合併症や性別、躁状態やうつ状態のタイプなどによって、薬を選んでいきます。開始後は副作用に確認し、問題なければ、治療に必要な用量まで増やし、効果を判定していきます。副作用のため増量できない、あるいは増量できたが効果がないということであれば、もう一度薬を見直して、他のものを検討し、また効果を判定していきます。そして、治療中には数か月毎には血液検査をして、副作用が出ていないかのチェックを続けていきます。このような作業を繰り返しながら、副作用が少なく、効果のある薬を見つけていきます。

 治療を受けておられる方、あるいは今から治療を受けようとされている方の参考になれば幸いです。

  

 今日は薬について触れましたが、治療は薬物療法だけではありません。双極性障害の治療のゴールは「躁状態やうつ状態の波をゼロにすること」ではなく、「躁状態やうつ状態の波とうまく付き合っていける程度に症状をコントロールしていくこと」だと考えています。実際の治療では、どのように気分の波を乗りこなしていくかという観点も重要になってきます。機会があれば、その点についても触れればと思っています。

 

 

 

2020.02.22 | うつ病・躁うつ病,医師のこと・医院のこと,心療内科,精神科全般,精神科治療について

抗うつ薬の中止後症状について

 昔は抗うつ薬というとうつ病の薬でしたが、最近では、うつ病だけでなく、不安障害全般(パニック障害、強迫性障害、PTSD、全般性不安障害など)、月経前不快気分障害(PMDD)などに使われるようになっています。

 抗うつ薬によって症状がよくなり、再発のリスクの高い期間を過ぎたら、環境的にも心理的にも落ち着いていれば減薬を勧めていきます。そして、減薬中に再発がなければ、最後に抗うつ薬を中止していきます。

 今日は、抗うつ薬を最終的に中止するときの注意点についてお話しします。

 基本的には抗うつ薬は依存性がなく中止できますが、それでも中止後症状という現象が起きることがあります。

 その中止後症状の多くは、薬を中止後5日以内に起こることがほとんどです。

 中止後症状には、さむけ、筋肉痛、発汗、頭痛、吐き気、眠れない、夢をみる、風邪のような症状、めまい、音に敏感になる、涙が出続ける、落ち着かない、イライラする、理由もなく不安になる、集中力がでない、などがあります。

 多くは軽い症状なので、様子をみるだけで徐々に落ち着いてきます。

 症状が再発したと、焦って、薬をすぐに再開する必要はありません。

 しかし、しばらく経っても落ち着かない場合には、中止後症状だけではなく、症状が再発していることもあるので注意が必要です。

 

 何度も中止に失敗している方の場合には、薬を半錠、1/4錠(場合によってはそれ以上の少量)と減らしていって中止していきます。

 半減期の長い抗うつ薬に切り替えてから、ゆっくり減薬して、中止していくという方法をとることもあります。

 

 薬は、正しい知識によって正しい用い方をしないと、うまく増量できず治療が成功しなかったり、薬がやめれなくなってしまいます。心配な場合には、主治医の先生に相談してみてください。

2020.02.22 | うつ病・躁うつ病,パニック症・パニック障害・広場恐怖症,全般不安症・全般不安障害,医師のこと・医院のこと,強迫症・強迫性障害,心療内科,社交不安症・社交不安障害(対人恐怖、社交恐怖、あがり症),精神科全般,精神科治療について

不眠とその原因について

 睡眠のトラブルは、いろいろな要因によっておこってきます。身体の疾患や、心理的要因、薬の影響、精神疾患によるものなどいろいろな原因が不眠をきたします。

 そして、その原因によって最初にどのように治療していくかが決まります。治療すべき原因があるにもかかわらず、初期の治療を間違えると効果が不十分なだけでなく、残念ながら睡眠薬の依存に至ってしまうこともあります。

 では、不眠にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は、大きく4種類に分けました。

 ①身体の疾患からの不眠

 ②体内時計のずれ

 ③精神疾患

 ④原発性の不眠症

 原因がはっきりしているものを①~③として最初に挙げて、他に原因がないものを④として最後にしました。

 ①の代表的なものには、むずむず足症候群、周期性四肢運動障害、睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます。これらの疾患には、従来の睡眠薬を投与するよりもそれぞれの疾患に対する治療が優先されます。

 ②のなかで多いものに、若年者には睡眠相後退、高齢者には睡眠相前進による概日リズムの障害があります。これらの体内時計の問題も、従来の睡眠薬ではなく、生活の改善や、高照度光療法、メラトニン受容体作動薬などの治療を行います。

 ③の精神疾患の場合も、さまざまな睡眠困難が出現します。睡眠の確保も並行して行うこともありますが、基本的には精神疾患そのものの治療を優先して行っていきます。また、精神疾患の治療中に薬による睡眠困難が出現することもあります。たとえば、抗うつ薬の副作用として睡眠困難が起こったり、抗精神病薬や抗うつ薬の副作用のむずむず足症候群やアカシジアによって睡眠困難に至ったりすることもあるので注意が必要です。

 ④のように、他に原因がないような場合を原発性不眠症と言います。まずは睡眠に悪いことをしないように生活の改善を試みます。そして、不眠の程度に応じて睡眠薬を使用していきます。従来の睡眠薬は依存性があり注意が必要ですが、最近では依存性が少ない睡眠薬も登場しています。睡眠薬の依存にならないためには、実生活での悪循環の要因を減らしながら、通院のたびに実現可能な目標を設定しなら、徐々に薬を回数を減らしていくことが大変重要です。

 今回は不眠についてごく簡単に触れましたが、またどこかで詳しく触れれればと思っております。

2019.12.17 | 不眠症・睡眠障害,医師のこと・医院のこと,心療内科,睡眠時無呼吸症候群,精神科治療について