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「Mindfulness Annual Gathering 2026@名古屋」を終えて
MBSR(マインドフルネスストレス低減法)マインドフルネス当院について
日本国内で、ジョン・カバット・ジンの国際基準に準拠した正式なMBSR(マインドフルネスストレス低減法)講師認定プログラムは、現時点では、International Mindfulness Center JAPAN (IMCJ)と、Japan Mindfulness Collaborative (JMC)の二つの機関が、窓口となり実施しています。
当院薬剤師(私の妻)は、2024年から、その正式な認定機関の一つであるIMCJの講師認定プログラムを受講していました。
合計840時間という、長いトレーニングでしたが、ようやく修了することができ、ようやくMBSR認定講師になることができました。
そして、このご縁から、IMCJ代表の井上先生と宮本先生に来ていただいて、当院が入る健康文化館ビルの関連施設にて、1dayリトリートを行うことになりました。
井上先生と宮本先生、お二人のマインドフルで包み込まれるような穏やかな雰囲気の中で、本物のサイレントリトリートに触れられ、素晴らしい時間を過ごすことが出来ました。
また、会場は、横井オーナーのこだわりが詰まった音楽ホールで、緻密な音響設計を施してあるそうです。
そのおかげで、静寂もさることながら、美しい残響が生まれ、サイレントリトリートとして、最高の場であったのではないかと思います。
おりんによる、音の時間も素晴らしいものでした。
シマタニ昇竜工房様のおりんは、おりん界のフェラーリと言われるほどの名品です。
このおりんの音、井上先生の素晴らしい演奏、この音楽ホールが揃うことによって、記憶に残る幸せな時間になりました。
そして、最後に、私が少しお話をするお時間をいただきました。
せっかくですので、その際の話を、アーカイブとして残させてもらうことにしました。
もしよかったら、拙い話ですが、読んでみてください。
とにかく、良い機会をいただきましたこと、皆さまに感謝いたします。
年に一回くらい、このようなリトリートが開催できたらいいなと思っています。
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このようなご縁をいただき、せっかくの機会ですので、私のマインドフルネスとの出会いと、それによる気づきや体験、その後の診療の変化、クリニックでの取り組みを、お話をしたいと思います。
まず、私は、滋賀県の田舎の寺で生まれました。寺で育ったものの、医学部に入り、医師になり、寺を継ぐことはないと思っていました。が、20台後半で家庭の事情で寺を継ぐ話がでてきたので、結婚と同時に一度戻りました。しかし、住職になる自信が持てず、結局諦め、名古屋に戻り、クリニックを開業しました。
「寺を捨てた 檀家さんを裏切った」とういう、後ろめたさが消えず、それによって、かえって、仏教への興味が強まっていきました。
寺を継ごうとしていた時期に住職免許をとるために、仏教の学校に通い、勉強もしました。その際に、初期仏教の概念に何かが足りないというか、生きた知恵をして理解できない感覚がありました。
たとえば、六道という概念があります。三悪道として地獄道、餓鬼道、畜生道があり、三善道として阿修羅道、人間道、天道がありますが、六道の中で解脱ができるのは人間道だけとされています。最上位である「天道」ではないのです。「生老病死という苦しみがあるからこそ、そこから脱したいと願い、解脱への実践をするからである」とのことですが、何か心から理解できない感覚がありました。
また、五蘊という概念もあります。五蘊は、「色(刺激)→ 受(感受)→ 想(概念化)→ 行(行動)→ 識(意識体験)」というものです。まるで認知神経科学モデルですが、なぜ初期仏教にこの概念を持ち出す必要があるのか、これもしっくりこない感じがありました。
マインドフルネスの概念そのものの源流は約2600年前の初期仏教ですが、現代のマインドフルネスの源流であるジョン・カバット・ジンが1979年に作ったMBSRという治療プログラムも、仕事柄、もちろん知っていました。
そして、ジョン・カバット・ジンのMBSRに影響を受けて、「思考の内容を変えるのではなく、思考との関係性を変える。ありのままに受け入れる」というマインドフルネスの視点を取り入れた新しい心理療法を次々と世に出てきていることも、当然知っていました。
そのため、現代のマインドフルネスの源流である、ジョンカバットジンのMBSRにも強く興味を持ちました。
そこで、どこから手を付けようかと考えたのですが、迷いはありませんでした。クリニックでの取り組みを考えるなら、もちろんMBSRを学ぶのがよかったのでしょうが、 私自身は初期仏教への興味がどうしても強くあったので、ヴィパッサナー瞑想を迷わず選びました。
いろいろ調べていくと、ヴィパッサナー瞑想のほとんどは出家僧のための長期間の厳しいものですが、ゴエンカ式という在家の人でも参加できるものものがあること、日本でも、10日間宿泊するサイレントリトリートのコースがあることを知りました。
コロナ禍でタイミングを逸したのですが、ようやく2022年に初回の10日間コースに参加しました。
初回コースの4日目は苦しかったですが、10日を終えましたころには、心も体も開放された感覚がありました。1回目のコースが終わってから、いろいろ良い変化が得られたので、毎日2時間程度瞑想するようになりました。
しかし、毎日2時間続けていても、半年、一年と時間が経つと、マインドフルネスの充電が減ってくるので、メンテナンスのため、その後も、10日間のサイレントリトリートに定期的に参加しています。
ヴィパッサナー瞑想を続けていて、感じたのは、よく昔の人が山に篭って穢れを落とすようなことを書いていますが、まさにそのような体験があり、悪い条件づけが取れるというか、いろいろ囚われにくくなりました。囚われても、またこの思考が出てきたなってくらいで、付き合えるようになりました。
身体的な変化もありました。よく肩や背中、全身の筋肉が張ってきて、耐えきれなくなると、マッサージや鍼灸に通っていたのですが、1回目のコースに参加して以降、それらにお世話になることがほぼなくなりました。
時間感覚の変化もあります。時間がゆっくりと流れます。とくに、しっかり瞑想をしている時期は、瞑想中以外もグラウンディングできているせいか、自動反応することが少なるため、心地よいゆっくりとした時間を過ごせます。
リトリート中の中で語られる、最も印象に残っている王と王妃の話をします。
王と王妃は、仏陀と同じ時代を生きた人で、二人とも瞑想者です。
王が王妃に尋ねます。「お前はこの世で、自分よりも愛しいと思う者が誰かいるかね?」と。
王妃は、「王様、よく考えてみましたが、私にはこの世で、『自分自身』よりも愛しいと思える人は他に誰もおりません」と迷いなく答えます。
そして、王妃はこう問い返しました。「では王様、あなたにはご自身よりも愛しい人がいますか?」と。
そして王は、「言われてみれば、私もやはり自分自身が一番愛しい」と。
「お互いに一番大切なのは相手ではなく、自分自身である」ということに直面した二人は、「夫婦なのにこれで良いのだろうか」、「仏教では自我を捨てるように教わるのに、自分を一番愛しているのは間違いではないか」と悩み、仏陀のもとを訪ねてこのことをありのままに報告しました。
仏陀は、王妃の正直さと洞察を大いに褒め、次のように語りました。「心のなかでどの方向を探してみても、自分よりも愛しいものを見つけることはできない。それと同じように、他の人々にとっても、それぞれ自分自身が最高に愛しいのである。したがって、自分が最も愛しいと知る者は、他者を害してはならない」と。
この講話を聴いて、私の人生にとって、二つの大きな変化がありました。
一つ目は、人生観です。
今まで、どこかで追われていたようなところがあったのですが、人生の目標とは、突き詰めると、自我とどう付き合うかなのだなと思えるようになりました。
瞑想していると、最初は表層の悩み事があれこれでてきますが、ある程度深まってくると「よく見られたい」とか、自分のことばかり浮かんできます。ほんと、愚かな動物だなと感じます。けれども、だって、生存本能をもつ動物だものって、温かく思えるようにもなりました。
人間の悩みは、ほとんどが対人的なものです。ときに私の自我と、周囲の自我はぶつかりあいます。しかし、自我が薄くなると、ぶつかりにくくなります。自我が薄い方が圧倒的に生きやすくなることも知りました。自我を薄めるのは、自分のためなのだと。私自身、自我に振り回された20代、30代だったので、自我との付き合い方の大切さを学びました。
人間というのは、生存本能や自己愛から逃れられません。だからこそ、それを自覚して、穏やかに生きるということ。
もう一つは、家族観です。
この王と王妃の夫婦関係にも衝撃を受けました。
それまで、夫婦というのはある程度感情をぶつけ合うというのが、本来の形であり、普通だと思っていました。家族とはそうゆうものなのだと迷いもなく信じていました。
だからこそ、この話を聞いて、カルチャーショックを受けました。夫婦がそれぞれ自我を俯瞰して、それを穏やかに語り合うという形があるんだと。
自分もそのような家庭を築きたいと心から思いました。
妻にMBSRを実践してもらうだけでも良かったのですが、一緒にヴィパッサナー瞑想のリトリートにも参加したいと考えていました。
ようやく、昨年2025年末に、念願が叶って、妻と一緒に参加することができました。
その後、家庭の空気が穏やかに変わったように感じます。
娘たちが小さいうちに、夫婦でマインドフルネスに出会えて、本当によかったと思っています。
もちろん、子供たちに、諭す、叱るってことは必要ですが、感情にまかせて怒るというのはなくなりました。
娘がイライラしているときには、家族で瞑想します。そしたら、だいたい娘がしくしく泣きだします。そこからはカウンセリングがはじまって、話をよくよく聞いていくと、ようやく、本人がその感情とその原因だろう事象に気づいてくれます。
自分自身だけでなく、家族が感情や思考を俯瞰する手助けをしやすくなった気がします。
ここまでは私個人としての話でしたが、ここからは、精神科医として、クリニックとして、何が変わったのか、お話します。
マインドフルネスをコアに持つ心理療法であるACT,MBCT、DBTや、マインドフルネスとよく比較される森田療法などは、知識としては知っているものの、心から理解しきれていない感覚がありましたが、瞑想を続けていると、これらの心理療法が、体感的にわかるようになりました。
ACTの脱フュージョンや、森田療法のとらわれからの脱却、がよくわかるようになりました。不安の裏には、執着があります。不安自体を、「文字通り」に受け取らないこと。多くの場合、その裏には、実は良い執着があること。これに気づくのが大事だとわかりました。
この理解が深まったことによって、不安障害の方に、心理的な指導がしやすくなりました。
私は、とくに森田療法が好きなのですが、これは、治療のうえで、とてもよかったと思います。
心理的なアプローチをしないと、薬で症状を抑えることになってしまって、どんどん薬が増えてしまいやすくなります。
薬の量の適正化、最小化という点ではよかったですし、何よりも一度身についた心理療法のスキルは、その方にとって、終生生きた知恵をして役立ちます。
そして、当然ながら、クリニックとしても、マインドフルネス自体にも取り組みたいと思うようになりました。
ヴィパッサナー瞑想は本質的には宗教性はないのですが、どうしても仏教という宗教的背景がつきまといます。なので、やはりクリニックでやるのであれば、MBSRだろうということで、準備を始めました。
既にお話したとおり、妻が理解してくれたので、IMCJさんの講師養成講座を受講させてもらうことになりました。
講師に認定されるまでは時間があるので、それまでにも何らか取り組みたいと思い、2024年から、ショートケアとして、ヨガとボディスキャン、静座瞑想などを組み合わせたマインドフルネス講座をはじめました。
やっていて気がつくのは、思考との関わり方が上手になっていくおかげで、表情が柔らかくなってくる方が一定数おられますので、やっていてよかったなと思います。
診察でマインドフルネス系の心理療法についてお話したりするんですが、「マインドフルネス講座に参加するようになってから、先生が言っていることがわかってきました」と言っていただけることがあります。やっぱり、知識だけではない、体験的な理解が必要だなと思います。これも、マインドフルネス講座をやった甲斐があったと嬉しくなります。
あと、森田療法は本来、入院治療で、絶対臥褥を1週間します。スマホ、読書、会話、気晴らしなどを一切禁じられ、食事・洗面・排泄以外は終日布団に横たわって過ごします。この間、自分の内面の不安や恐怖と、直面せざるを得なくなります。前半は激しい不安に襲われますが、後半は「不安などの思考は自然現象で止めることはできない。不安を抱えたままでも、自分は壊れない。」ということを悟ります。
この間の体験が森田療法の土台となりますが、この最初の絶対臥辱がマインドフルネスで代替できるんだろうと私は考えています。
今は、入院で森田療法を受けられる病院はほとんどなくなってしまったからこそ、マインドフルネスが重要なのではないかと思います。
おかげさまで、妻が講師の認定を受けられたので、 これから、正式なMBSR8週間コースにも取り組んでいきたいと思っています。
どのように、患者さんによい変化が起こるのか、お役にたてるだろうかと、とても楽しみにしています。
長くなりましたが、ありがとうございました。

Mindfulness Annual Gathering名古屋
International Mindfulness Center JAPAN様主催のMindfulness Annual Gathering名古屋にて、
当院院長がIMCJ代表井上清子先生と対談をさせていただく機会をいただきました。
静けさの中で自分と向き合うマインドフルな時間。
心に深く染み渡るシマタニ昇龍工房様のおりんの音色。
そして、マインドフルネスの「これから」を語り合う対談。
今回、この素晴らしい時間を包み込んでくれた場所「5/R.Hall & Gallery」は、クリニックのあるビル「健康文化館」のオーナーの想いが溢れる素晴らしい場所。
こころとからだ 健康と文化 様々な視点から感じる貴重な体験となりました。
今回このような素晴らしい機会をくださったIMCJ井上清子先生、宮本賢也先生、横井オーナー、シマタニ昇龍工房様、そしてご参加いただいた皆様に心より感謝申し上げます。

心療内科・精神科の通院歴と保険加入 知っておきたい「告知義務」とスムーズな審査への対策
現代社会において、ストレスや環境の変化から心療内科や精神科を受診することは決して珍しいことではありません。適応障害やうつ病、不安障害などは、誰にでも起こり得る身近な病気です。
しかし、いざ「生命保険や医療保険に新規加入しよう」「マイホームのために住宅ローンを組もう」と考えたとき、過去や現在の通院歴がハードルになるのではないかと不安を抱く方は少なくありません。中には「受診履歴を知られたくない」という思いから、受診そのものを躊躇してしまうケースも見受けられます。
精神科・心療内科の通院歴が保険加入に与える影響や、正しく告知義務を果たすべき理由、そして審査をスムーズに進めるための具体的な対策について、解説します。
1,保険加入時の「告知義務」となる期間
生命保険や医療保険に加入する際、契約者は自身の健康状態や過去の病歴を正確に保険会社へ伝える義務があります。これが「告知義務」です。心療内科や精神科への通院歴も重要な告知対象となっています。
告知で求められる一般的な期間は「過去5年間」です。「手術を受けたか、または連続して7日以上の入院、あるいは特定の疾患で医師の診察・検査・治療・投薬を受けたか」が問われます。精神疾患で定期的に通院し、お薬を処方されている場合は、この項目に該当します。
「言わなければバレないのではないか」と考えるのは非常に危険です。万が一、事実を告げずに加入した場合(不告知)、その後に給付金の請求時や保険金の支払い事由が発生したタイミングで、保険会社が行う調査によって、後から不告知が判明することがあります。「告知義務違反」と判断されると、契約は強制的に解除されます。告知義務違反の内容や契約状況によっては、因果関係のない給付について支払われる場合もありますが、契約解除や不払いとなるリスクがあります。 将来の安心を買うための保険で最大の不利益を被ることになるため、ありのままを正確に告知することが大前提となります。
2,住宅ローンと「団体信用生命保険(団信)」
マイホームを購入する際、多くの金融機関では団体信用生命保険(以下、団信)への加入を住宅ローン融資の必須条件としています。団信とは、ローン返済中に契約者が死亡または高度障害状態になった際、保険金でローンの残債を弁済する仕組みです。
この団信の加入時にも、通常の生命保険と同様に健康状態の告知が求められます。
団信の告知書では、多くの場合「過去3年以内に、特定の病気(うつ病や適応障害などの精神疾患を含む)で医師の診察・検査・治療・投薬を受けたか」が問われます。他の軽微な病気とは異なり、精神疾患に関しては通院期間の長短や薬の量の多寡にかかわらず、期間内に受診歴があれば告知対象となることが一般的です。
精神疾患の治療中でこの期間内に該当する場合、通常の団信の審査は厳しくなる傾向にあります。これは、精神疾患に伴う万が一の事態(自死リスクなど)や、それに起因する重大な健康リスクを保険会社が評価するためです。
しかし、「通院歴がある=即座にローン不可」というわけではありません。完全に治療が終了(投薬終了)してから3年以上が経過していれば、そもそも告知対象外となるケースもあります。また、後述するように、引受基準の緩い別の選択肢も存在します。
3,医学的な「完治」と「寛解」
精神疾患の性質を理解する上で、非常に重要なキーワードが「寛解」です。精神疾患において「完治」という言葉を使わない理由は、症状がなくなっても再発する可能性が残るためです。そのため、「完治」の代わりに「寛解」という言葉を使います。
保険会社が審査において最も重視するのは、「最後の診察日(または服薬が完全に終了した日)からどれだけの期間、安定した状態(寛解)を維持できているか」という点です。一般的には、投薬が完全に終了し、寛解状態となってから3〜5年が経過していれば、通常の保険や団信への加入可能性は大幅に高まります。
4,審査の通過率を上げるための「主治医の診断書」
現在、症状が安定しているものの、告知期間の条件(過去3〜5年以内)に引っかかってしまう場合、ただ告知書に「うつ病」「適応障害」と病名だけを書くと、保険会社は最悪のケースを想定して一律に「加入不可」としてしまうことがあります。
そこで有効な対策となるのが、主治医による診断書(または意見書)を自主的に添えて提出する方法です。
【診断書に明記してもらうべき3つのポイント】
主治医に診断書を依頼する際は、単に「良くなっている」という曖昧な表現ではなく、審査の判断材料となる以下の点を具体的に記載してもらうと効果的です。
①すでに通院や服薬が終了していること(または、維持療法として極めて少量の投薬のみで安定していること)。
②現在、休職することなく正常に勤務できており、日常生活にも全く支障がないこと。
③現在の病状が安定しており、再発を認めていないこと。
これらが明記された診断書があることで、保険会社側は「再発リスクが低い優良なケース」と判断しやすくなり、一律での加入不可を回避し、条件付き(保険料の割増など)であっても加入を認められる可能性が広がります。
※ただし、保険会社によっては独自の審査基準を優先し、指定以外の診断書の受け入れを行わない場合もあります。また、詳細すぎる記載がかえって慎重な査定につながることもあるため、まずは告知書の「詳細欄」に初診日・終診日・現在の状況を正確に、過不足なく記載することが基本となります。
5,一般的な保険・団信の加入が難しい場合の選択肢
もし、通院中であることや時期的な理由から通常の保険への加入が断られてしまった場合でも、諦める必要はありません。以下のような代替選択肢が用意されています。
① 引受基準緩和型(限定告知型)保険
通常の保険よりも告知項目が大幅に少なく、基準が緩やかに設定されている保険商品です。「過去2年以内に入院や手術をしていないか」といったシンプルな質問が中心となるため、現在進行形で心療内科に通院し、服薬を続けている方でも加入できる可能性があります。ただし、通常の保険に比べて保険料が割高に設定されている点には注意が必要です。
② ワイド団信(団体信用生命保険)
住宅ローンを組む際、通常の団信よりも引受基準が緩和された「ワイド団信」を取り扱う金融機関が増えています。金利が年0.2%〜0.3%ほど上乗せされるケースが多いですが、うつ病や適応障害などの持病があっても、現在の症状や治療状況によっては、加入できる可能性があります。
③ 団信なしでの住宅ローン(フラット35など)
公的融資である「フラット35」などでは、団信への加入が任意となっています。どうしても団信の審査に通らない場合は、団信を付けずにローンを組み、万が一の際の家族への備えとして、加入可能な引受基準緩和型の生命保険や別の資産運用でカバーするという方法もあります。
6,治療を最優先に、正しい知識で選択を
精神科や心療内科への通院歴があるからといって、将来の安心やマイホームの夢を諦める必要はまったくありません。
最も避けるべきなのは、保険に入りたいがために自己判断で通院を中断したり、薬を飲むのをやめてしまったりすることです。これでは本末転倒であり、健康状態を悪化させる一番の原因になります。
まずはご自身の治療と心身の安定を最優先にしてください。その上で、現在の正確な状態を主治医と共有し、必要であれば診断書などの力を借りながら、正確な情報を告知をして最適な保険商品を選んでいきましょう。保険会社によって引き受けの基準は千差万別ですので、専門のファイナンシャルプランナーや保険代理店に相談しながら、複数の選択肢を比較検討することをおすすめします。
受診がバレないか心配な方へ 診療情報や医療費通知などについてまとめました
個人情報、診療情報、医療費通知などの取り扱いについて、精神科や心療内科への受診にあたって、気になるところだと思いますので、今回まとめてみました。
1, 診療情報が外部に漏れないか 「医師の守秘義務」と「個人情報保護法」の解釈
• 刑法第134条(秘密漏示罪)
医師、薬剤師などの専門職が正当な理由なく職務上知り得た秘密を漏らした場合は、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられます。また、医師免許に関する行政処分の対象にもなりえます。ただし、これは「正当な理由がない場合」に限定されます。自傷他害の恐れがある場合や、公衆衛生上の重大な利益、あるいは裁判所の命令がある場合などは、本人の同意なく情報が開示される法的例外が存在します。「児童虐待防止法」や「高齢者虐待防止法」に基づく通告義務も、この守秘義務より優先されます。
• 個人情報保護法
医療機関は「個人情報取扱事業者」であり、病歴は「要配慮個人情報」に該当するため、第三者提供には原則として本人の同意が必須です。そのため、家族からの問い合わせに対しても、本人の同意がなければ回答しないのが一般的です。ただし、命の危険があるような緊急性の高い状況では、命を守るために情報共有が認められる例外的なケースがあります。これはあくまで、命を守るためのやむを得ない法的な判断によるものです。
2, 家族に知られないかどうか 医療費通知(紙・WEB)のプライバシー、マイナポータルとデジタル情報の連携
• 「医療費のお知らせ」の管理
多くの健保で親展郵送やWEB化が進んでいます。受診者が「被扶養者(家族の扶養に入っている)」である場合、医療費通知は「被保険者(世帯主)」宛に届くのが基本ルールです。WEB通知であっても、世帯主のアカウントからは家族全員の受診履歴が見える設定がデフォルトであるケースが多いため、注意が必要です。しかし、被扶養者(家族)が「自分の受診分を世帯主に通知しないでほしい」と健保に申請すれば、世帯主への一括通知から除外したり、別送したりなどの対応が可能な場合があります。プライバシー保護の観点から個別の相談に応じてくれる健保も多いため、相談することも検討してみてください。
• マイナポータル連携
「代理人設定」を家族間でしていなければ、受診履歴を家族に見られることはありません。しかし、確定申告(医療費控除)を家族でまとめて行うために一度でも「代理人登録」をしてしまうと、申告者がマイナポータル連携で情報を取り込んだ際、受診した医療機関名や金額が自動的にリスト化されてしまいます。家族に知られたくない医療情報がある場合は、安易に「代理人設定」を承認しない、またはマイナポータルから代理人解除(権限変更)の手続きを行うことで、誰にどの情報を公開するかを自分でコントロールできます。
3, 会社に受診がバレないか 健康保険制度と会社への通知
・診療報酬明細書(レセプト)の閲覧について
原則として、会社の人事担当者が直接個人の診療報酬明細書を閲覧することはできません。健康保険組合職員には厳格な守秘義務があり、会社側への情報提供は禁止されています。自社単独で健康保険組合を設立している場合、担当者が重複しているケースもあり、運用の透明性には注意が必要です。
4, 会社内で知られないかどうか 産業医と診断書の取り扱い
・主治医による診断書
「要配慮個人情報」として扱われるため、最小限の開示になります。情報に触れるのは、人事担当者、産業医、および就業上の配慮を決定する立場にある直属の上司などに限定されます。
• 産業医の守秘義務
産業医は、安全配慮の観点から「就業制限の必要性」や「就業上の配慮」を会社に報告します。現場のマネージャーには具体的な「病名」は伏せ、「どのような配慮(残業禁止、立ち仕事不可など)が必要か」という就業上の意見のみを伝える運用が推奨されています。とはいえ、配慮の内容(通院頻度、業務軽減の程度)から、実質的に状態を推察されるケースがあることは否定できません。
「なぜか、うまくいかない」の正体を知る: 「大人の発達障害」との向き合い方
社会に出て、責任や役割が増えるにつれ、「なぜ自分だけ周囲と足並みが揃わないのか」「努力しているのにミスが減らない」といった悩みに直面する方が増えています。
かつては子どもの疾患と考えられていた発達障害ですが、現在は「大人になってから気づく特性」として広く認識されるようになりました。
生きづらさの背景にあるのは、本人の努力不足や性格ではなく、脳の特性(神経発達の多様性)です。本稿では、専門的な視点からその特徴と、自分らしく生きるためのヒントを解説します。
1,「目に見えない困難」の正体とは
発達障害は、生まれつきの脳機能のバランスの偏りによって生じます。
大人になって表面化するのは、学生時代には通用していた「力技のカバー」が、複雑な社会生活において限界を迎えるためです。
社会生活で見られやすい困りごとの一例を、以下の表にしました。
| 具体的な困りごとの例 | 背景にある脳の特性 |
| 頻繁なケアレスミス(書類の誤字脱字、桁の読み間違い)、重要書類の紛失、アポイントの時間忘れなどが重なり、業務の信頼性を損なう。 | 情報を脳内に一時的に保持しながら適切に処理する容量が小さいため、注意の持続やシフティング(切り替え)がうまくいかず、些細な不注意エラーとして表面化します。 |
| 締切間近のタスクがあるにもかかわらず、重要度の低い別の作業に没頭してしまい(先延ばし)、結果として全体のスケジュールが破綻する。 | 報酬の予測や動機づけに関わるドパミンの受容・伝達に特異性があるため、「将来の大きな成果(締切を守る)」よりも「目の前の興味・刺激」を優先しやすく、衝動的なタスクの選択や時間管理の困難に繋がります。 |
| 「資料を適当にまとめておいて」と言われ、自分なりの解釈で膨大なデータを作成したが、上司が求めていた「簡単な要約」とは全く異なり、トラブルになる。 | 脳が「細部」の情報を処理することに特化しすぎており、それらを統合して「全体の文脈(コンテキスト)」や「暗黙の了解」を抽出するネットワークが弱いため、言葉通りの局所的な解釈に縛られやすくなります。 |
| 急な会議のセッティングや担当業務の割り込みが入ると、頭が真っ白になってフリーズしてしまい、臨機応変な対応が全くできなくなる。 | 脳の神経ネットワークが「予測」に基づいた行動パターンに強く依存しており、想定外の刺激(予測エラー)が入力された際の再組織化(パターンの切り替え)に過剰な脳内コストがかかるため、強いフリーズやパニックを引き起こします。 |
| 職場のマニュアルや長文の報告書を読むと、文字を目で追うだけで極端に時間がかかり、内容を正確に理解する前に脳が激しく疲弊してしまう。 | 全般的な知的能力(IQ)は正常であるものの、視覚的に入力された文字を脳内で「音(言語)」に自動変換するデコード処理の自動化が阻害されているため、文字を読むこと自体に膨大な認知的エネルギーを消費します。 |
2,発達障害の3つの主要分類
医学的な診断基準(DSM-5など)では、主に以下の3つに分類されますが、これらは独立しているわけではなく、複数の特性が重なり合っている(併存している)ケースが一般的です。
【自閉スペクトラム症(ASD)】
「社会的コミュニケーションおよび対人相互反応における持続的欠陥」と、「限定された反復的な様式の行動、興味、活動」の2領域を中核症状とします。
言語的・非言語的コミュニケーションの統合不全(視線、表情、身振りの不一致)。相互的な対話や社会的・情緒的相互性の欠如(いわゆる「空気が読めない」「文脈の理解が困難」)。
変化に対する極度の苦痛、認知的柔軟性の欠如、特定の感覚入力に対する過敏性または鈍麻性。
・成人期(大人の場合)の臨床像
カモフラージュ:知的能力が高い場合、マナーや規則を「知識」として学習し表面的に適応(擬態)していることがありますが、その分、過剰な精神的疲労を伴います。
非定型的な臨機応変さの欠如:暗黙の了解や、明文化されていないルールの抽出・適用が困難であり、想定外の事態や曖昧な指示に対して著しい機能障害を呈します。
【注意欠如・多動症(ADHD)】
「発達水準に不相応な不注意」および/または「多動性-衝動性」の持続的な様式を中核とし、これらが複数の環境(職場と家庭など)で機能や発達を妨げている状態です。
不注意:実行機能(ワーキングメモリ、計画、組織化、優先順位づけ)の障害。
多動性・衝動性:自己調整能力(抑制機能)の障害。待つことの困難や、結果を考慮しない拙速な行動。
・成人期(大人の場合)の臨床像
多動性の内面化:小児期のような目に見える多動は減弱し、「絶え間ない精神的な落ち着きのなさ(主観的な焦燥感)」や「多弁」へと変容します。
不注意優勢の顕在化:スケジュール管理の破綻、タスクの先延ばし(Procrastination)、重要な細部の見落としなど、社会生活や業務遂行における致命的なミスとして表面化します。
【 限局性学習症(SLD)】
全般的な知的能力(IQ)は正常範囲内であるにもかかわらず、生物学的要因を背景として、「読字」「書字表出」「算数(計算・推論)」のいずれか、または複数の学業的スキルの習得や使用に特異的な困難を示す神経発達症です。
単なる努力不足や教育環境の不備ではなく、脳における特定の情報処理(音韻処理や視空間認知など)の障害に起因します。
・成人期(大人の場合)の臨床像
成人期では小児期のような初歩的エラーは目立たなくなるものの、膨大な文書の精読、論理的で構造的な報告書の作成、複雑な数値データの分析などにおいて、処理速度が極端に低下したり、脳の疲労度が著しく高くなったりします。
知的能力でカバー(代償)しきれなくなった段階で、業務上の深刻な不適応として初めて自覚されるケースも少なくありません。
※グレーゾーンについて
診断基準をすべて満たさないものの、特性によって生活に支障が出ている状態を指します。
医学的な「白黒」がつかなくても、抱えている「生きづらさ」は本物です。診断名に関わらず、具体的な困りごとへの対策を講じることが重要です。
3,「二次障害」を防ぐための診断とサポート
最も避けたいのは、周囲の叱責や自己否定が続くことで、うつ病や適応障害、不安障害といった「二次障害」を併発することです。
「自分が発達障害かどうか」を診断することだけが目的ではありません。
「自分の脳がどのようなクセを持っているか」を可視化することが真の目的です。
4,職場や日常生活での「合理的配慮」と工夫
特性は「治す」ものではなく「付き合う」ものです。
環境を自分に合わせる工夫が、パフォーマンスを最大化します。
合理的配慮の例
| 配慮内容 | 具体的な例 |
| 業務指示を「視覚化」し、口頭のみの指示を避ける | 指示は必ずチャットやメールなどテキスト(文字)で残す。業務手順をマニュアル化し、写真や図を交えて視覚的にわかりやすく提示する。 |
| 業務の優先順位を明確にし、スケジュールを構造化する | 「Aを13時までに終わらせ、次にBをやる」など、上司がタスクに優先順位と期限を指定して割り振る。毎朝の短いミーティング(朝礼)で、その日の業務内容とスケジュールを一緒に確認する。 |
| 感覚過敏に配慮し、物理的な作業環境を調整する | 業務中のノイズキャンセリングヘッドホンや耳栓の着用を許可する。集中しやすいよう、パーテーションで区切られたデスクや、静かな別室(サテライトスペース)での作業を認める。 |
| 曖昧な表現を避け、明確・具体的なルールで伝える | 「資料をきれいに作って」ではなく、「フォントはMSゴシック、サイズは11ptで統一して」など、数値や固有名詞を使って具体的に指示する。職場のルール(挨拶の仕方、休憩の取り方、電話の取り次ぎ方など)を明文化して共有する。 |
| 突発的な予定変更を避け、事前に予告する | 会議のテーマやアジェンダ(議題)は、事前にテキストで共有し、見通しを持てるようにする。担当業務や配置の変更がある場合は、可能な限り早めに本人に内示や予告を行う。 |
5,診断は「諦め」ではなく「戦略」の第一歩
「発達障害かもしれない」と向き合うことは、決して後ろ向きなことではありません。
それは、今まで「合わない靴」で無理に歩き続けてきた自分を労り、「自分に合った靴」を選び直すための戦略的な一歩です。
もしあなたが一人で苦しんでいるのなら、まずは信頼できる専門医や相談窓口の門を叩いてみてください。
あなたの特性を「弱点」ではなく「個性」として活かせる場所は、必ず見つかります。
精神障碍者年金を検討されている方へ、 申請までの流れを説明します
障害年金の申請手続きは、複雑で時間もかかるため、焦らず一つずつステップを踏んで進めていくことが大切です。
一般的な進め方の流れを整理しました。
【障害年金申請までのステップ】
1,主治医に相談する
やること: 現在の病状で申請が通る可能性があるかどうか、主治医に度相談しましょう。
注意点: 後述しますが、精神疾患で「初めて医師の診察を受けた日」に、厚生年金に加入していて、3級の要件を満たしているかが重要です。わかっていれば、この時点でそのことも伝えましょう。
2,「初診日」を確認する
やること: その精神疾患で「初めて医師の診察を受けた日」がいつかを確認します。どこが初診日かわからな婆には、過去の受診歴をまとめましょう。
注意点: 今通っているクリニックではなく、過去に別の病院(内科などでも可能なことあり)に最初に行った場合は、その日が初診日になります。
3,年金事務所で「納付要件」を確認する
やること: お近くの年金事務所(または街角の年金相談センター)へ行き、初診日までの年金保険料をしっかり納めていたかを確認してもらいます。
持参物: 年金手帳(または基礎年金番号通知書)、本人確認書類。
注意点: この「納付要件」を満たしていないと、どれだけ症状が重くても申請自体が受理されません。初診日に厚生年金に加入していて、3級の要件を満たしているかも確認しましょう。もし3級の要件を満たしていない場合には、2級以上しか受給できないため、ハードルは高くなってしまいますので、申請が受理される可能性がどの程度あるのかを主治医ともしっかり話しましょう。
4,「初診日」の証明書をもらう
やること: 初診のクリニックと、現在のクリニックが異なる場合のみ必要です。
初診のクリニックに「受診状況等証明書」を書いてもらいます。
注意点: 最初から同じクリニックに通い続けている場合は、このステップは不要です(次の「診断書」に統合されます)。
5,主治医に「診断書」の作成を依頼する
やること: 現在の主治医に「障害年金用の診断書(精神の障害用)」を書いてもらいます。
注意点: 医師に日頃の「日常生活の困難さ」が伝わっていないと、軽い内容で書かれてしまうことがあります。
事前に自分の困りごと(一人で家事ができない、電車に乗れない等)をメモにまとめて渡すのが有効です。
6,「病歴・就労状況等申立書」を自分で作成する
やること: 発病から現在までの経過や、日常生活・仕事での困りごとを自分で(または家族が)書類に記入します。
注意点: 医師の診断書の内容と矛盾がないように書くことが、審査を通すための重要なポイントになります。
7, 書類を年金事務所等へ提出する
やること:診断書、申立書、戸籍謄本、通帳のコピーなど、必要書類をすべて揃えて提出します。
提出先: 障害基礎年金(初診日に国民年金)は市区町村役場の年金窓口。障害厚生年金(初診日に厚生年金)は年金事務所。
8, 審査結果を待つ
やること:提出後、結果が出るまで約3〜4ヶ月ほどかかります。
結果: 審査に通れば「年金証書」、通らなければ「不支給決定通知書」が自宅に届きます。
【スムーズに進めるためのアドバイス】
今回の書いた流れを参考にして、年金の納付状況と現在の病状・生活状況を主治医にしっかり伝え、相談しながら申請にむけて動いていきましょう。
障害年金は、書類の書き方が非常に重要ですので、ご自身やご家族だけで進めるのが心身ともに負担である場合は、以下の専門家を頼ることを強くお勧めします。
・社会保険労務士(社労士):障害年金を専門に扱う社労士に有料で依頼すると、書類の作成や病院とのやり取りを代行・サポートしてくれます。
・精神保健福祉士(PSW):通院中のクリニックや、地域の精神保健福祉センターにいるケースワーカーです。無料で申請の初期相談に乗ってくれることが多いです。
マインドフルネスの「質」を問う: 心のエクササイズには正しい指導者が必要な理由
MBSR(マインドフルネスストレス低減法)こころからだスクール(保険適応)マインドフルネス
昨今、書店やSNS、ビジネスセミナーなどで「マインドフルネス」という言葉を見ない日はありません。
ストレス社会を生きる現代人にとって、心を調える優れたアプローチとして定着したことは、喜ばしい限りです。
しかし、その一方で「マインドフルネストレーナー」や「インストラクター」を名乗る人々が急増し、玉石混交の状況を呈していることに、私は一人の医師として強い危機感を抱いています。
マインドフルネスは、単なる「リラクゼーション」や「癒やしのツール」ではありません。本来は、科学的なエビデンス(医学的根拠)に基づいた厳格な心身のトレーニングです。
だからこそ、誰から、どのように学ぶかが決定的に重要なのです。
「ブーム」の裏に潜むリスク
現在、数日間の通信講座や独自のワークショップを受けただけで、トレーナーとして活動している人が少なくありません。
もちろん、そのすべてが悪意あるものとは言いませんが、マインドフルネスの指導には、人間の「心」と「脳」、そして「身体」に対する深い理解が不可欠です。
特に注意が必要なのは、うつ病、不安障害、あるいは過去に強いトラウマを抱えている方々です。
安易な方法や、知識の浅い指導者のもとで瞑想を実践すると、抑え込んでいた感情や過去の記憶が急激にフラッシュバックし、かえって症状を悪化させてしまうリスク(瞑想の副作用・魔境などとも呼ばれます)があります。
心のエクササイズであるからこそ、正しいフォームと適切なサポートが必要なのです。
世界基準の「MBSR認定講師」という選択肢
では、何を基準に「正しい講師」を選べばよいのでしょうか。一つの明確な指標となるのが、マインドフルネスの原点であり、医学的・心理学的エビデンスが最も豊富に蓄積されているMBSR(マインドフルネスストレス低減法)の正式な認定講師です。
MBSRは、1979年にジョン・カバット・ジン博士によって開発された8週間のプログラムです。この指導資格を得るためには、極めて厳格で長期にわたるトレーニングと、自身の深い実践(何日にも及ぶ沈黙のリトリートなど)が義務付けられています。
<世界的に認められている代表的な養成・認定機関>
•ブラウン大学(Brown University)のマインドフルネスセンター
• カリフォルニア大学(UC)各校のマインドフルネスセンター
• IMA(Institute for Mindfulness-Based Approaches ):ドイツが拠点。日本ではInternational Mindfulness Center JAPAN(IMCJ)が提携して実施。
• GMC(Global Mindfulness Collaborative):約14ヵ国の教育・研修機関で構成。日本ではJapan Mindfulness Collaborative(JMC)が窓口となり提供。
これらの機関から認定されたMBSR講師は、プログラムを安全かつ効果的に進めるための知識だけでなく、参加者の心に予期せぬ揺らぎが起きた際に対処する「臨床的な視点」も徹底的に訓練されています。
正しい方法で、最大の恩恵を
日本では、これらの国際的な認定を持つ講師は、医師などの医療従事者を含め、まだまだ非常に少ないのが現状です。
だからこそ、私たちはその価値を正しく認識する必要があります。
マインドフルネスを本格的に学びたい、あるいはメンタルヘルスの改善として生活に取り入れたいとお考えの方は、ぜひ「その講師がどのようなバックボーンを持ち、どこの認定を受けているか」を確認してください。
心というデリケートな領域を扱うからこそ、流行に流されず、本物の知識と安全な技術を持った指導者のもとで、正しいマインドフルネスの扉を叩いていただけることを、切に願っています。
MBSR(マインドフルネスストレス低減法)とは: 有効性が支持されている「心の整え方」
現代社会において「ストレス」という言葉を聞かない日はありません。
2026年現在、テクノロジーの進化により私たちの生活は便利になりましたが、一方で脳は絶え間ない情報の荒波にさらされ、常に「評価」や「比較」のバイアスに晒されています。
こうした中、当院が治療の重要な柱の一つとして位置づけているのが、MBSR(Mindfulness-Based Stress Reduction:マインドフルネスストレス低減法)です。
MBSRは、1979年にマサチューセッツ大学医学部のジョン・カバット・ジン博士によって開発された、8週間の構造化されたプログラムです。
もともとは慢性的な痛みを持つ患者さんのために用いられましたが、現在では不安症、うつ病、ストレス関連疾患、さらには健康な人のレジリエンス(回復力)向上にも広く応用されています。
マインドフルネスとは、一言で言えば「今、この瞬間に、評価や判断を加えず、意図的に注意を向けること」です。
私たちは日常生活の中で、過去の失敗を悔やんだり、未来の不安を先取りしたりして、頭の中が「心ここにあらず」の状態になりがちです。
MBSRは、その意識を「今」へと呼び戻すトレーニングです。
専門的な視点から言えば、MBSRは私たちの脳を「Doingモード(何かを達成しよう、解決しようとするモード)」から「Beingモード(ただ、そこに在るモード)」へとシフトさせる練習です。
Doingモードとは、 ストレスに直面した際、私たちはそれを「取り除かなければならない敵」と見なして戦います。
しかし、心の悩みは戦えば戦うほど、反芻(はんすう)思考によって深みにハマってしまう性質があります。
Beingモードは、 MBSRでは、湧き上がる感情や身体の感覚を「単なる現象」として客観的に観察します。
たとえ不快な感覚であっても、それを排除しようとせず「あるがまま」に認めることで、脳の扁桃体(不安のセンター)の過剰な興奮が静まり、前頭前野(理性のセンター)の働きが回復していくことが、最新の脳科学研究(神経可塑性)でも明らかになっています。
MBSRでは、8週間にわたり以下のような技法を段階的に学びます。
ボディスキャン: 身体の隅々に意識を向け、微細な感覚を感じ取る。
静坐瞑想(座る瞑想): 呼吸や音、思考の移り変わりを静かに観察する。
マインドフル・ムーブメント: 自分の身体の限界や動きの感覚を丁寧に味わう。
これらを通じて、日常生活のあらゆる瞬間(食事、歩行、対人関係)にマインドフルネスを取り入れる「ライフスタイルとしてのセルフケア」を確立していきます。
当院は「多機能型精神科診療所」として、通常の外来診療だけでなく、保険適応のショートケアプログラムのなかで、マインドフルネス(MBSR)やヨガといったボトムアップ(身体から心へ)のアプローチを組み合わせた治療体制を整えています。
MBSRは、単なるリラクゼーション法ではありません。それは、自分自身の人生という荒波の中で、自分という船の「舵(かじ)」を再び自分の手に取り戻すためのトレーニングです。
「いつも不安が頭から離れない」「休んでいるはずなのに疲れが取れない」という方。その苦しみを抱えたままで構いません。
MBSRという「知恵」を通じて、あなたの中に眠っているレジリエンス(しなやかな強さ)を一緒に見出していきませんか。
多機能型精神科診療所とは: 普通のメンタルクリニックと何が違うのか?
単に医師が診察を行い、薬を処方するだけの「外来単能型」のクリニックとは異なり、患者さんが地域社会で自分らしく暮らしていくために必要な「医療・リハビリ・生活支援」を一体的に提供する診療所のことです。
主要な5つの機能(柱)
以下の機能のうち複数を備え、それらが有機的に連携していることが特徴とされています。
①専門的な外来診療
的確な診断と、最新のエビデンスに基づいた適切な薬物療法、および心理的なサポート。
②精神科デイケア・ショートケア(リハビリテーション)
日中の居場所を提供し、対人関係の練習や生活リズムの構築、復職支援(リワーク)などを行います。
③訪問診療・訪問看護(アウトリーチ)
通院が困難な方や、生活の場での直接的な支援が必要な方に対し、スタッフが自宅へ赴き、服薬管理や生活相談を行います。
④心理カウンセリング(心理療法)
公認心理師等による専門的な対話を通じて、自己理解や問題解決能力を高めます。
⑤地域連携・社会的支援
保健所、就労支援事業所、相談支援専門員などと密に連携し、医療の枠を超えて「生活全体」をコーディネートします。
多機能型診療所の最大の特徴は、治療のゴールを「症状の消失(寛解)」だけにおかず、「リカバリー(自分らしい人生の再構築)」に置いている点にあります。
リカバリーとは、精神疾患という困難を抱えていても、自らの人生を主体的に捉え、希望を持って社会の中で役割を果たしていくプロセスそのものを指します。
このリカバリーを支えるために、多機能型診療所では以下の3つの視点を大切にしています。
• 多職種チーム医療: 医師、看護師、公認心理師、精神保健福祉士、作業療法士などが対等な立場で連携し、多角的な視点で患者さんを支えます。
• 個別性(パーソナライズ): 画一的な治療ではなく、その方の強み(ストレングス)や生活背景に合わせたオーダーメイドの支援計画を立てます。
• 継続性: 急性期から安定期、そして社会復帰へと至るまでの全過程を、同じ顔なじみのスタッフが伴走することで、安心感と信頼関係を維持します。
心の「回復力(レジリエンス)」を最大化するために:薬物療法を超えた多角的アプローチの重要性
こころからだスクール(保険適応)マインドフルネス個別心理カウンセリング多機能型精神科診療所当院について森田療法
私たちは日々、心の不調に悩む方々と向き合っていますが、治療において最も大切なのは、単に「症状を抑えること」だけではありません。
その先にある、困難に直面してもしなやかに立ち直れる力――「レジリエンス(精神的回復力)」を引き出し、育んでいくことこそが真のゴールだと考えています。
今回は、なぜ当院が薬物療法だけでなく、各種心理療法、ヨガやマインドフルネスといったセルフケアを重視し、多機能なクリニックを目指しているのか、その理由をお話しします。
2026年6月の診療報酬改定により、日本の精神医療は大きな歴史的転換点を迎えました。
今回の改定では、これまでの「薬物療法中心」のモデルから、「心理支援を併用した多職種協働型」の医療へシフトさせるという国の明確な意図が示されています。
公認心理師によるカウンセリングの適応拡大や、多職種が連携して患者さんを支える仕組みの評価が高まったことは、私たちがかねてより提唱してきた「お薬だけでなく、対話や身体へのアプローチを統合する治療」の重要性が、社会的に認められた証でもあります。
心の不調は、生物学的な要因(脳の機能)、心理的な要因(考え方の癖)、そして社会的な要因(環境や人間関係)が複雑に絡み合って起こります。
これに対し、一方向からのケアだけで解決しようとするのは限界があります。
当院が推奨する「多角的アプローチ」には、以下のような相乗効果があります。
• 薬物療法: 脳の神経伝達物質を整え、心の「土台(ベースライン)」を安定させます。漢方薬も、症状によっては、十分な効果が得られます。
• 心理カウンセリング、心理療法、: 対話や体系化された心理療法を通じて、自己理解を深め、認知や行動のパターンを見直します。
• 身体的アプローチ(ヨガ・マインドフルネス): 呼吸や身体の感覚に意識を向けることで、自律神経のバランスを整え、ストレスに対するしなやかな心身を作ります。
トップダウン(認知・薬物)だけでなくボトムアップ(ヨガ・マインドフルネス)の視点を持つことは、慢性化を防ぐ上で極めて有効です。
これらが組み合わさることで、単なる「症状の消失」を超えて、自分自身の心身をコントロールできているという実感(自己効力感)が生まれ、レジリエンスが強化されていくのです。
当院では、医師による診察に加えて、公認心理師によるカウンセリング、集団心理療法、さらには、ヨガや、マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)を取り入れたセルフケアのなど、多彩なプログラムを実践しています。
これらは単なる「オプション」ではありません。患者さんがクリニックを離れた後の長い人生においても、自分自身をケアできる「一生物のスキル」を身につけていただくための、治療の柱です。
私たちは現状に満足することなく、今後さらに「多機能な心の拠点」になれるよう邁進してまいります。
精神科医、公認心理師、看護師、薬剤師、MBSRトレーナー、ヨガインストラクターなどの知見を持つ専門家たちが、一つのチームとしてあなたを支える。
そんな「多職種協働」の力を結集し、誰もが本来持っている「健やかになろうとする力」を最大限に引き出せる場所でありたいと願っています。
「お薬を飲んでいるけれど、もう一歩先の安心がほしい」「自分の力で自分を整える方法を知りたい」という方、どうぞ、私たちの扉を叩いてください。
あなたのレジリエンスを育めるように一緒に伴走していきます。

