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コラム

「 ADHD(注意欠陥多動性障害)」の記事一覧

発達障害診断後の治療について

ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠陥多動性障害)などの発達障害の診断を受けたあとの、医療資源の少なさが医療を提供する側の課題になっています。

 

ASDにしてもADHDにしても、特性と付き合っていくことが目標になり、ショートケアやデイケアでの専門プログラムが治療の主軸になるべきではありますが、それらを提供できる医療機関はまだまだ限られています。

 

それ以外の選択肢となると、ADHDであれば薬物療法がありますが、ASDの場合には薬物療法という選択肢がありません。

 

そのため、気分障害や不安障害などの併存症の治療を行いながら、特性が障害とならないように環境を調整していくことになります。

  

社会生活上の障害が大きい場合には、精神障碍者手帳を取得し、障碍者雇用などにて障害が顕在化しないように就労環境を整えていくことになります。それが難しい場合には、障碍者年金なども検討していくことになります。

  

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ADHD治療薬について

心理教育や環境調整などを行っても、日常生活に困難が続く場合には、薬物療法を検討します。

 

成人期の薬物療法には、精神刺激薬であるコンサータ(メチルフェニデート徐放錠)、非精神刺激薬であるストラテラ(アトモキセチン)、インチュニブ(グアンファシン)を用います。

 

精神刺激薬のコンサータ(メチルフェニデート徐放錠)は、脳内のドパミンとノルアドレナリンの働きを活性化させ、不注意、多動・衝動性を抑えて落ち着きのある行動がとれるようになり、自分の行動に注意を払えるようになります。しかし、その一方で、脳の興奮を高めるため、不安を強めたり、躁状態を惹起する可能性があり、双極性障害や不安障害には使いにくい薬剤になります。他の副作用としては、頭痛や腹痛、食欲低下(主に昼食)があります。効果は、大体半日程度で、終日は効きません。そのため、双極性障害や不安障害がなく、学校や職場での困り感が強く、昼間だけの効果が続けばよい場合には、このコンサータ(メチルフェニデート(徐放錠)を使用することになります。

 

なお、精神刺激薬は依存性のリスクがあるため、システムへの患者登録が必要で、処方医師と調剤できる薬局を許可制にするといった流通規制が敷かれています(当院ではコンサータ処方が可能です)。

  

非精神刺激薬には、ストラテラ(アトモキセチン)、インチュニブ(グアンファシン)があり、終日にわたる効果が期待できますが、一般的に精神刺激薬よりも効果はマイルドになります。

  

ストラテラ(アトモキセチン)は、脳内のノルアドレナリンとドパミンの濃度を上昇させ、前頭前野の機能を改善させることで、不注意、衝動性、多動性を改善します。効くまでに、2週間から4週間ほどの時間がかかります。終日効果が持続するので、昼間だけでなく家庭生活や睡眠の問題があるときには、よく使われます。副作用としては、鎮静、消化器症状、頻脈、血圧上昇などが起こることがあります。コンサータとは違って、不安障害や双極性障害が併存している場合にも問題なく使えます。

 

インチュニブ(グアンファシン)は、α2Aアドレナリン受容体に作用し、交感神経の過剰な働きを抑え、神経の緊張を取り去る効果を持ち、多動性や衝動性、感情面に効果があります。終日効果が持続するので、ストラテラと同様に、昼間だけでなく、家での困り感も強い場合に使用されます。副作用としては、鎮静、眠気、血圧低下などの副作用が起こることがあります。アトモキセチンほど効果が出るのに時間はかかりません。副作用の眠気は、飲み初めに強く出ることがあるため、慣れるまで(大体2~4週間)は我慢して続けてみましょうとアドバイスしています。

  

対人関係のトラブルにおけるASDのADHDの違い

ASD(自閉スペクトラム症)でもADHD(注意欠陥多動性障害)でも、対人関係のトラブルで困っていらっしゃる方は多いと思います。しかし、その背景には違いがあります。

 

ASDの方は、相手の思考や感情が直観的に理解できないので、場にそぐわない言動、いわゆる空気が読めない言動をしてしまい、対人トラブルになってしまいます。

 

その一方で、ADHDの方は、相手の思考や感情は理解できるものの、その衝動性の高さから、思ったことをそのまま口に出してしまい、トラブルになりやすくなります。

  

ASDとADHDは併存していることも少なくないので、その場合は両方の特性によって、それぞれ単独の場合よりもさらに対人トラブルを招きやすく、生きづらさを抱えてしまいます。

 

対人トラブルによる否定的な体験を繰り返していくと、「よくわからないけど、だいたい私の言動は間違っている」と思いこむようになります。 

 

そして、対人恐怖から社会生活が怖くなってしまう場合もあれば、失敗しないために高い行動基準に従って行動して疲弊してしまう場合もあります。

  

対人的な心的外傷によってトラウマ症状で苦しんだり、過剰適応によって気分障害や不安障害を来たしたり、などの二次障害が合併してくると、その治療も併せて行っていく必要がでてきてしまいます。

  

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ADHDにおける幼少期のエピソードついて

ADHDの診断において、幼少期のエピソードを確認することはとても重要です。

 

ご本人からの情報も大事ですが、より客観的な情報が得られるように母などの養育者からの聞き取りも重要になります。

 

しかし、ご本人が大人の場合には、育児期から随分時間が経っており養育者の記憶が曖昧になっていたり、養育者が障害を否認したい気持ちが強く正確な情報が得られなかったり、親との関係不良で情報聴取ができなかったり、などが多くあるのが現状です。

 

小学校の通知表から情報も重要になります。成績から知的能力を見るだけでなく、担任の先生からのコメントが診断の手がかりになります。最近では直接的に改善すべき点を書かないことが多くなっていますが、「今学期は遅刻や忘れ物が減っていて素晴らしいです」などと褒め言葉としての記載からその頃の様子をイメージすることができることも多くあります。

 

養育者からの情報が得られない、通知表もない、話すことが苦手で困りごとを言葉にできない、などの場合には、診断が困難になることがあります。

 

自記式の心理検査、知能検査(WAIS-Ⅳ)、ほか注意力を測る検査などを組み合わせていきますが、あくまで心理検査は参考材料の一つであり、検査結果のみで診断することはできません。

 

情報が少なく診断が難しい場合には、通院を続けて診察を重ねるなかで、次第に集まってきた情報をもとに総合的に判断していくことになります。

 

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ADHDで見られやすいWAIS-Ⅳの所見

大人のADHDの診断において、ほとんどの場合WAIS-Ⅳというウェクスラー式知能検査を行います。

 

ADHDの場合には、自閉スペクトラム症のような知的能力の顕著な凸凹は少ないですが、ワーキングメモリーや処理速度の低下を伴うことが多いことが一つの特徴です。

 

また、それに加えて、知能検査から予想される社会での適応レベルよりも、実際の生活で大きな支障がでていることも、もう一つの重要な所見といえます。

  

ADHD診断に際して、WAIS-Ⅳはあくまで補助的な位置づけではありますが、診断を行ううえでとても重要な検査と言えます。

 

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ADHD(注意欠陥多動性障害)の診断治療

当院では、医師の診察でADHDが疑われる場合、90~120分間程の時間を要する心理検査を組み合わせて、診断を行っています。心理検査の予約は混みあっていますので、診断までに時間を要しますのでご了承ください。

 

ADHDの治療は、行動の改善を図り、対処法を身につけることとともに、薬物療法も治療の選択肢になります(当院ではコンサータ処方も可能です)。

 

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ADHD(注意欠陥多動性障害)の症状

ADHD(注意欠陥多動性障害)は、

 

「注意を持続するのが難しい」「ケアレスミスが多い」「片づけが苦手・忘れ物が多い」などの不注意症状と、

  

「目的のない動きをする」「感情が不安定になりやすい」「過度なおしゃべりや不用意な発言」などの多動性・衝動性に特徴付けられる発達障害の一つです。

 

・物事を行なうにあたって、難所は乗り越えたのに、詰めが甘くて仕上げるのが難しいことがよくある
 

・計画性を要する作業を行なう際に、作業を順序だてるのが難しいことがよくある
 

・約束や、しなければならない用事を忘れることがよくある
 

・じっくりと考える必要のある課題に取り掛かるのを避けたり、遅らせたりすることがよくある
 

・長時間座っていなければならない時に、手足をそわそわと動かしたり、もぞもぞしたりすることがよくある

 
・まるで何かに駆り立てられるかのように過度に活動的になったり、何かせずにいられなくなることがよくある

 

上記が4項目以上当てはまる場合はADHDが疑われます。これらの症状によって、社会生活や日常生活で支障を来たしている方は受診を検討されるとよいでしょう。

  

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