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うつ病/うつ状態のときの大きな決断について

 

 うつ病の治療を行っていると、仕事のことは絶対に避けて通れません。

 今回は、退職や転職などの決断について大事なことをお話しします。

 

 それは、「うつ状態のときには重大な決断をしない」ということです。

 なぜかというと、うつ状態のときは、しっかり頭が回らず、冷静に物事を考えられないだけでなく、うつ症状によって悲観的な観測ばかりをしてしまうためです。そのため、良い判断はできません。

 退職だけではありません。離婚や大きな取引ついても同じです。

 これらの不可逆的(元に戻すことができない)な重大な決断は、頭がよく回るようになってから、冷静に物事を考えて行うのがよいと思います。

 そのため、診察時にうつ病の方が「もう体が動かなくて会社に行けないから退職しようと思っている」「とにかく仕事から離れたいから退職届を出すつもりです」とおっしゃったとしても、「まずは休職して、よくなってから冷静に考えてください」と説得します。

 うつ病の最中に退職してしまって、短期的には仕事の重圧がなくなって気持ちは楽になりますが、うつ病がよくなって本調子になってから後悔してしまうこともあります。仕事だけでなく、結婚や大きな取引も同様です。

 

 一方で、決断を延期するように促さない場合もあります。

 うつ症状が軽度で判断力がある方が「ここの会社はどうしても自分には合わないから転職をしようと思っている」とおっしゃったなら、多くの場合は反対しません。

 明らかに衝動的な決定だったり、明らかに良くない決断である場合には「もう一週間だけ考えましょう」とアドバイスしたり、「もう少し時間をかけて一緒に考えていきましょう」と解決策を一緒に考えていく姿勢をとっていきます。

 

 不用意に重大な決断をしてしまったことで、後々になって、心にも、社会的にも、大きな痛手を負ってしまうことがあります。

 人の人生というのは、節目節目で、何かを選んで、場合によっては何かを捨てて、形づくられていきます。

 うつ病になったということは、無理が生じてきた結果であり、人生の一つの節目になることが多くあります。

 だからこそ、大きな決断は慎重にしていくべきですし、良い決断ができる状態で、しかるべき時期にしっかり行ってください。

 できるかぎり不利益がないだけでなく、将来に活きる決断ができることを願っていますし、主治医としてもできるかぎり助けになれればと思っています。

 

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うつ病がちゃんとよくなっているのかがわかる指標ってあるんですか?

 今回は、うつ病がちゃんとよくなっているかがわかる指標についてです。

 うつ病にはHAM-D、MADRSなどの評価尺度がいくつかありますが、ここでは専門的なものではなく、うつ状態が改善していくとともに患者様自身が実感できるものいくつかを取り上げたいと思います。

 私が外来診療を行うなかでチェックしていく点は数多くありますが、そのなかでとくに代表的な3つについて触れていきます。

 治療経過中にいろいろな変化がでてきますが、そのなかでも実感しやすいものを一つ目に取り上げます。それは、「笑える」ということです。「笑う」というのはごく当たり前の行為ですが、この当然の行為がうつ状態ではできません。そのうえ、できてなかったことに長らく気が付いていないことがほとんどです。

 うつ病が少しよくなってきたあたりで、「お笑い番組を見て久しぶりに笑いました。笑ってから、ずっと笑えてなかったことに気が付きました。半年ぶりくらいは笑ってなかったのではないでしょうか」とおっしゃります。

 この「笑えた」という体験はご本人にとって、かなり実感しやすい指標で、明るい兆しになります。患者様にもちゃんと治療の効果がでてきることを身をもって体感してもらい、安心して引き続き治療を続けてもらうようにお伝えしていきます。

 次の指標も、笑えるようになるのと同じように比較的実感しやすいものです。

 新聞などの活字の文章を読んで、ちゃんと頭に入ってくるということです。これが結構重要で、うつ状態が改善して、頭がちゃんと回るようになってきた証拠です。とくに、元々新聞を読む日課があった方にはとても実感しやすく、「新聞などの活字の文章を読んで、頭に入ってくる」とおっしゃります。うつ状態が改善して、頭がちゃんと回るようになってきた証拠です。

 「ずっと眺めていただけだったけど、最近は新聞の記事がちゃんと頭に入るようになってきた」というふうによくなってくると、ご自宅で規則正しい生活をしてもらうだけなく、徐々に図書館などへの外出を促していく段階になってきます。この「文章を読んで頭に入る」というのは、治療者としてどの段階にあるのかを確認するうえでとても重要な通過点です。

 最後は、復職に向けての大事な指標です。うつ病は症状がよくなってからも、しばらく社会生活を休んでいた影響もあり、リハビリのような慣らし期間が必要になります。社会生活を営むという行為は脳も身体もずっと走り続けているようなものなので、しばらく社会生活を休んだあとに突然同じようなペースで走ろうと思っても当然そのようにはできません。

 そのため、徐々に脳も身体も慣らし運転をしながら、走りの調子を確認していくことが必要になります。週5日間仕事していたときのような生活を試験的に送ってみるのです。具体的には、通いやすい図書館に9時に行き、17時まで勉強や作業などをしてみます(もちろん昼休みはとります)。最初のうちは午前中で疲れて昼頃に帰っていても、徐々に慣れてくると9~17時で勉強や作業ができるようになってきます。

 このように、一日長時間脳を働かせても疲れなくなってきて、ご本人に「復職は大丈夫そう」という感覚がでてくると、主治医としては復職を視野に入れ、会社の復職基準などを確認しながら、就労可能の判断を行っていくことになります。

 今回は、うつ病の治療過程で、私が必ず確認する3つの指標をごく簡単ですがご紹介しました。 ちゃんと治療を行えば、笑えるようになり、頭が回るようになり、きっと仕事も以前のようにできるようになります。 今回の3つの指標によって、ご自身の状態がよくなっていることを捉える助けになればと思っております。


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同僚にADHDではないかと言われたけど、、、

「ここ最近、ケアレスミスが増えているから、ADHDではないか」と上司や同僚に言われたとおっしゃって受診される方が多くおられます。

 社会人になって数年程の方の場合には実際にADHDであることが多いですが、長らく同じ会社で働いておられる方の場合では話が変わってきます。

 というのも、ADHDの症状は基本的には幼少期からずっと続いているものだからです。学生時代に「落ち着きがなく、じっとしていられない」「学校の提出物を忘れることが多かった」「朝の準備に手間取り、遅刻してしまうことが多かった」などの症状があったのであれば、大人になってからもADHDの症状が残存している可能性は十分あります。

 しかし、そのような過去のエピソードがなく、そのうえ社会人になって長年経っている方で、同僚に「最近不注意なミスが多いからADHDではないか」と言われた、あるいはご自身で「最近ケアレスミスが増えたからADHDではないか」と疑われた場合は、ADHDでないかもしれません。

 不注意をきたす疾患はいろいろありますが、このようなケースで一番多いのは、うつ病です。うつ病でも、集中力や注意力低下がすることで、不注意症状がよく出てくるからです。ほかにも、認知症などでも不注意症状はでてきますので注意は必要ですが、ご高齢でなく、働く世代であれば、当然うつ病である可能性の方が高いです。

 不注意をきたす病気は、ADHDだけでなく、うつ病や認知症など他にもあることを今回はお書きしました。お困りの方の、受診の際の参考になればと嬉しいです。

 

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うつ病の方の復職について

 心療内科の外来を担当していると、当然うつ病で休職が必要になる方がおられます。休職に入り、治療をしっかり続けていくと、うつ状態は良くなってきますが、最後に難関があります。それが復職です。

 会社によって、復職の基準というのが違います。定時勤務からでないと復職できないところ、午前中のみの時短勤務から開始できるところ、3か月間ほどの社外リワークプログラムを満了してからでないと復職がかなわないところ。会社の方針によって、復職時のハードルは結構違います。産業医としてもうつ病の復職に関わることが多いのですが、最近よく感じるのは、昔のような窓際的なポストが今は少なくなり、ちゃんと働ける状態にあるのかを企業側がとても重要視するようになってきていることです。

 復職後3か月間ほどは猶予期間であり、リハビリ的な慣らし運転をしていく時期ですが、基本的にその期間を終了すると職場では周囲と同じように業務をこなしていかないといけなくなります。そのため、主治医としては、会社の復職時のハードルだけでなく、復職後3か月目以降を見越して、就労可能の判断をする時期を決定していかなければなりません。

 私は、いつも生活記録表という、毎日の活動が確認できるものを書いてきてもらいます。症状と生活をを把握しながら、徐々に家だけではなく、外で過ごす時間を増やしていってもらいます。そして、最終的に9時から17時まで図書館で、資格などの勉強ができるところまでに回復してくると、復職の場所や時期の調整を始めていきます。これで多くの方はうまくいくのですが、困難な場合も当然あります。そのような場合は、外部のリワーク施設と連携して、復職を目指していきます。

 皆不安を抱えながら復職をされていきます。しかし、復職まで十分な準備をし、復職後の猶予期間に十分な慣らし運転をしていけば、その不安は取り越し苦労だったことに気づきます。ちゃんと治療をし、しっかりと準備をすれば、もとのように働けるようになることが多いものです。今休職中の方は、定期的な通院治療のもとで、焦らずに社会生活のリハビリを着実に行っていきましょう。準備をしっかりすれば、不安だったものがちゃんと戻れるという確信に置き換わってくると思います。

 

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うつ病の方の不安について

 うつ病の方は、治療経過のなかでいくつもの不安を乗り越えていかねばなりません。休んだらどうなるのだろうか、休むことができるのか、ちゃんと治るのだろうか、ちゃんと復職できるかのだろうか、また再発するのではないだろうか、、、。

 うつ病は治る病気ですが、ちゃんと治療しないとよくなりませんし、治療を放棄するとこじらせて長引いてしまうこともしばしばあります。そのため、ちゃんと治療を続けてもらえるように、治療者として不安をしっかりケアすることがとても大切です。

 うつ病の経過中の不安は、大きく二つあります。一つ目は、うつ病の症状としての不安。もうひとつは、休職や復職、再発などの現実的な不安。実際に現れてくる不安は、どちらか一方というよりも治療の各段階で割合は異なれど両方が混在し、うつ病がよくなるにつれて徐々に後者のみになっていきます。

 症状としての不安については、客観的にできるだけ冷静に病気の症状だと理解できること、これがとても重要です。これを症状の外在化と言います。治療者としては、休養や薬物療法、心理療法などの治療によってうつ病の不安症状の波が静まってくるまで、なんとか症状を外在化して少しでも楽に受け止められるようにサポートしていき、ときには抗不安薬を併用したりします(この時期限定の抗不安薬の使用であれば依存になることはほとんどありません)。

 治療が進んでいくと、症状としての不安は目立たなくなってきますが、現実的な不安が置き換わるように出てきますので、差し引きの不安はさほど大きく減少しなかったりします。ここからは、しっかり今後の予想される経過を説明すること、実際に行動が拡大して良くなっていることを実感してもらうこと、本調子で働く姿を想像してもらうこと、などを心がけながら、できるだけ不安を解消できるように関わっていきます。

 心療内科や精神科に受診されることがありましたら、不安なことはしっかりおっしゃっていただくのがよいと思います。治療によって治さないといけない不安、説明を受けることでよくなる不安、各種制度によるサポートを知ることで解消される不安など、いろいろあります。一人で不安を抱え込んで、治療を放棄することはしないでください。

 

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