コラム

  1. こころからだクリニック
  2. 精神科治療について

精神科治療について

パニック障害は治療でよくなります

 きっかけもなく突然、動悸や息切れ、強い不安を伴い、ときには過呼吸を起こす発作のことをパニック発作と言い、このパニック発作が繰り返されるとパニック障害という診断になります。

 パニック発作が何度も何度も繰り返されると、「またパニック発作が起こるのではないか」「パニック発作が起きたらどうしよう」という不安が強くなっていきます。これを予期不安と言います。また、「また新幹線でパニック発作が起きそうだから旅行はやめておこう」「電車の中でパニック発作が起きるのが怖いから、今日は外出はしないでおこう」という、発作が起こっては困る状況を避けるようになってきます。これを、広場恐怖と言います。これらの予期不安や広場恐怖が強くなってくると、外出自体を避けるようになり、社会生活が制限されるようになっていきます。

 これらの症状は性格の問題だと片付けられがちですが、最近の研究では、脳のなかの危険を察知する「警報装置」のような働きをしている扁桃体という部位が過活動することによって、パニック発作がおこってくることがわかってきています。

 そのため、この扁桃体の過活動による不安の出現を抑える薬によって、治療が可能となっています。薬を服用することによって、パニック発作自体が軽減していきます。そして、パニック発作が起こらなくなってくると、次第に予期不安や広場恐怖が軽減し、次第になくなっていきます。

 大体の方は、薬の治療によって予期不安や広場恐怖もともに改善してくるのですが、パニック発作はなくなったけれど、どうしても広場恐怖がなくならない方がおられます。その場合は、認知行動療法をおこなっていく必要があります。どのような場面で恐怖を感じるか、どんな状況を避けているかなど、日々の振り返りを行いながら、身体と心が覚えてしまった不安と恐怖を徐々に解消していく取り組みを一緒におこなっていきます。この取り組みがうまくいくと、制限されていた社会生活が徐々に拡大し、以前の問題なかった頃のようになっていきます。

 調子のよかった頃のような生活に戻ってから、しばらくは薬で症状を抑えながら、避けていた状況を避けないように意識しながら生活をしていきます。そうして半年から一年間程度予防をしていくと、「もう薬飲んでいる必要あるのかな」というくらいの気持ちになってきます。そうしてくると、薬の減らし時です。

 薬をやめてからその後もずっと大丈夫という方もおられますが、再発をしてしまう方もおられます。その場合は、もう一度同じような治療をするとよくなります。何度も再発を繰り返しておられる方は、再発予防のために当面は薬を服用しておくことをお勧めします。

 簡単にパニック障害の説明をさせてもらいました。お困りの方の参考になればと嬉しいです。

2019.10.11 | パニック症・パニック障害・広場恐怖症,医師のこと・医院のこと,心療内科,精神科治療について

漢方治療で効果が見込める精神疾病

 心療内科の患者様で漢方治療を希望されてこられる方は多くおられますが、注意しなければならないことがあります。それは、そもそも漢方治療を行っていい疾患かどうかということです。 

 精神科では、精神疾患を「精神病」と「神経症」とに大きく二つに分けることがあり、「精神病」とは幻聴や妄想、激しい気分変動など現実と非現実が区別がつきにくい状態を言います。この「精神病」にはいろいろな病気がありますが、代表的なのは統合失調症や躁うつ病です。これらの疾患には、ほとんどの場合漢方薬は効きませんので、抗精神病薬や気分安定薬などの西洋薬による治療を行う方がよいと思われます。

 また、「精神病」とは違いますが、てんかんや認知症などの中核的な症状についても漢方薬は基本的には効きません。ただし、怒りっぽい、イライラする、落ち着かない、不安が強い、などの周辺の精神症状には、漢方薬が効果が見込めます。

 ほかには、中等度から重度のうつ病の抑うつ症状も、漢方薬では効果不十分であることがほとんどです。ただし、軽症の抑うつ症状や、うつ病治療中の身体の症状などには、漢方薬は有効ですので、試して価値は十分あります。

 上記した病態や疾患には、漢方薬では太刀打ちできないことが多いですが、それ以外の疾患については漢方治療が有効であることが多くあります。とくに、「神経症」や「心身症」と言われる状態は、漢方治療が得意としているところです。

 「神経症」とは、社会的な環境や、抱えている心理的な影響から、不安やイライラ、恐怖、葛藤、苦悩など、社会の中で生きている人であれば理解できるような範囲の精神症状の場合のことを指します。些細なことで不安になったり、イライラしてしまうなど、くよくよして後悔してしまう、一度気になったことが頭から離れない、などの誰しも経験するような症状です。 このような「神経症」には、漢方薬が有効です。

 「心身症」というと、普段から不安緊張が強くて、頭痛がよくする、汗をかきやすい、動悸がよくする、お腹が痛くなりやすい、胃のあたりが痞える、お腹が張って食べられない、出勤前に下痢をしやすい、喉が詰まる感覚がよくする、緊張感が解けず夜に寝つきがよくない、などなど、社会生活をしている人であれば、ストレスが気づかぬ間に溜まって、誰でも大なり小なり身体の不調がでてきます。「心身症」とは、このような病態のことをいいます。この「心身症」には漢方薬のもっとも得意とする病態の一つです。各診療科で調べてもらってとくに異常がなければ、漢方薬を試してみる価値が十分あります。

 まとめると、精神病や認知症、てんかんなどの中核的な症状には漢方薬は効果は見込めませんが、それ以外の「神経症」や「心身症」には漢方薬で十分効果が見込めます。今日は、先に漢方治療が難しい疾患に触れて、そのあとで治療可能な心身の病態を説明しました。受診のときの参考になれば幸いです。

2019.10.08 | 心療内科,漢方内科,漢方治療について,精神科全般,精神科治療について

処方薬依存を防ぐ

診療に当たって気を付けていることは数多くありますが、その中でも最も慎重になるのは処方薬依存についてです。 患者様が抗不安薬や睡眠薬の依存症に陥るかどうかは、主治医の影響がとても大きいからです。そのため、当院では依存に至らないように常に注意を払っています。

依存になりやすい薬を出さなければいけない場合、治療によって辛い症状が落ち着いてくるまでの短期的な使用であることをご理解いただいたうえで処方すること。「薬が効かなくなってきたから増やしてほしい」など依存傾向が出てきた場合、増薬のリスクをお伝えし、依存になりにくく止めやすい薬に切り替えていくこと。これが依存を防ぐために大切です。

つらい症状があって来院された患者様が、気付いたら処方薬依存に陥り、何年も通院し続けなければならないといった状況はあってはなりませんが、万が一そうなった場合に減薬も成功させていくのは精神科医の責務です。苦しくない減らし方があります。 「薬がやめられない」「薬が増えてきた」「増えた薬をどうにか減らしたい」 などの方は、是非一度ご相談ください。

2019.10.05 | うつ病・躁うつ病,パニック症・パニック障害・広場恐怖症,全般不安症・全般不安障害,医師のこと・医院のこと,心療内科,社交不安症・社交不安障害(対人恐怖、社交恐怖、あがり症),精神科全般,精神科治療について