「 当院について」の記事一覧
2025年2月以降に開講予定の集団心理療法について
これまで、「ここから考動セミナー(認知行動療法、森田療法)」、「ゆる~い哲学カフェ」などの集団心理療法、神経発達症の集団プログラム、ヨガやマインドフルネスなどを行ってきました。
集団心理療法は、心理療法的な学びに加え、集団ならではの自助の力が強く働きます。
それぞれの思考や感情を共有することによって、こころの浄化、カタルシスが得られるだけでなく、自らを相対化し客観視することもできます。
また、心理療法的エッセンスを生きた知恵として学び、参加者同士がその知恵を日常生活に応用、共有することで、ともに心理的な成長を目指していくことができます。
さらに、自助グループ的要素の強い集団心理療法においては、同じ心理的な問題を抱えている人同士が集まり、相互に理解し合いながら、問題を乗り越えていための助け合いの場、癒しの場となります。
これからも、皆様の役に立つ良いものを取り入れながら、プログラムを充実させていきたいと思っています。
2025年2月頃から、集団心理療法3講座を開講いたします。
一つ目は、「日記活用セミナー」です。
外来森田療法において特徴的なアプローチである日記療法をベースとした、実践的なコースです。
認知行動療法や森田療法のエッセンスを生きた知恵として学ぶ「ここから考動セミナー」が、2024年から始まっています。
「日記活用セミナー」は、「ここから考動セミナー」で得た知恵を実際の生活に応用し、自分自身が人生の主人公として運命を受け入れつつ、能動的に生きていくため実践的なコースとなっています。
二つ目は、「グリーフカフェ」です。
グリーフとは、大切な存在を失うという喪失体験による深い悲しみや嘆きと、それに関連する反応のことです。
大切な家族、恋人、友人、ペットとの死別によって、いまだ哀しみの渦中におられる方も多いのではないでしょうか。
そのような方に対する癒しの場として、「グリーフカフェ」を開講することにいたしました。
三つ目が、「コラージュ療法」です。
切り抜きの写真やイラストを用いて、心の奥にある無意識を、芸術というかたちで表現していきます。
言葉にできない感情や無意識の葛藤を表現することで、こころの浄化作用がえられます。
自分の内にある感情をうまく言語化できない方にとくに有用な心理療法です。
仲間と一緒にアートし、話すことによって、人間関係を築くことにも役立ちます。
2025年は、これらの3講座から開講し、春夏頃にはさらに、「家庭や育児の悩み相談カフェ」などの講座もはじめられるように準備を進めているところです。
マインドフルネス瞑想の10日間の合宿に参加してきました
あけましておめでとうございます。
今回の年末年始は長い休暇をいただき、大変ご迷惑をおかけしました。
実は、この間、マインドフルネス瞑想(ヴィパッサナー瞑想)の10日間の合宿に参加してきました。
静かな自然の中に籠って、沈黙を守り、ただただ瞑想をするというもので、今回で2回目の参加でした。
1回目もそうでしたが、やっぱり心身がリセットされますね。
日常生活で染みついた条件付けが取りさらわれ、白紙に戻るような感覚と表現してもいいかもしれません。
感覚が鋭敏になり、時間の流れが変わります。
瞑想合宿の間と、その後しばらくは、「今、一瞬一瞬」にとどまるとはこうゆうことなんだなって体感できます。
しばらくすると、このマインドフルな状態は弱まっていってしまうのですが、、、
2回目の参加で、感じとりにくい微細な身体知覚を、普段の生活の中でもしっかり浮き上がらせておくことの重要性がわかりました。
合宿後はボディースキャン瞑想をメインで行うようになり、日常生活の中での身体感覚が鋭敏になったように感じられます。
とにかく、いろんな意味で良い時間を過ごすことができました。
大事な時間を使わせてもらった家族に、感謝しなくてはなりません。
有名な禅語に「吾唯知足(われただたるをしる)」があります。
「不平不満を言わず、満足する気持ちを忘れないように」という意味合いで説明されることもありますが、
合宿後にこの言葉に触れて、「わたしはただ、満ち足りていることだけを知っている」という本来の意味を少し感じられた気がします。
自我が渇望したり不安恐怖したりしているだけで、実はもう満ち足りていると。
少しずつですが、自我に振り回されない穏やさを育んでいきたいと思っています。
2025年も、微力ながら一歩一歩精進してまいります。 どうかよろしくお願い申し上げます。
当院が実践していきたい医療のかたち
心の不調で来院される患者様に、当院が実践していきたい医療のかたちがあります。今回は、そのかたちを二つに分けてお話しします。
まず一つ目は、精神科医と漢方医として2つの視点から、治療を提案していくというものです。漢方薬で治すことができない精神疾患はもちろん多くありますが、一方で漢方薬で治すことできる心の症状というのも多くあります。また、向精神薬で通院中に漢方薬が得意とするちょっとした不調がでてくることもしばしばあります。精神科専門医・指導医として責務を果たしながらも、漢方薬で効果が期待できる病態であれば、漢方内科医の視点から新たな選択肢を提案していきたいと思っております。
二つ目は、安心して治療を受けていただくためにとても重要なことです。漢方薬と言っても副作用がないわけではありません。漢方薬をいくつも重複して使用したり、漫然と長期間服用したりすると、当然副作用は出やすくなります。また、向精神薬についても、もちろん副作用はあります。治療開始時に作用の出る前兆としてでてくる一時的なものから、すぐに中止をしなければ危険なものまでいろいろあります。漢方薬と向精神薬のメリットを比べるだけでなく、しっかりと双方のデメリットも比べ、それぞれのリスクをお伝えしたうえで治療を選んでいっていただきたくのが本来あるべき形です。つまり、説明もなく出された薬を服用するのではなく、インフォームドコンセントをしっかり受けていただいたうえで安心して治療を受けていただければと考えております。
以上のように、精神科医と漢方内科医の二つの視点から考えうる最善の選択肢を提案し、それぞれのメリット・デメリットをしっかり説明したうえで、安心して治療を受けていただくという、当院の考える理想の医療のかたちを実践していくつもりです。どうかよろしくお願いいたします。
精神科を掲げていない理由
心療内科と精神科という診療科の違いをその成り立ちからお話し、当院が精神科専門医であるにも関わらず精神科を看板には載せていない理由にも触れます。
まず、当院が標榜し看板にも載せている心療内科についてです。「内科」という言葉は、19世紀になって医学分野から「外科」が独立して別れたときからはじまり、現在では循環器内科、消化器内科、呼吸器内科、腎臓内科など臓器によってかなり細分化されていますが、臓器ではない分けられ方をしている内科分野があります。それが「心療内科」です。1963年に九州大学で積極的に心理療法をおこなう内科というところから「心療内科」が始まりました。既に東京大学で標榜されていた「物療内科」と対比する意図もあったのかもしれません。身体症状を中心とする神経症や心身症をおもな対象し、心身医学的な診療および研究が行われています。
次に、精神科専門医でありながら当院では看板には載せていない「精神科」についてです。精神保健の歴史は非常に古くからあるものの、精神疾患が本格的に医学として扱われるようになったのは19世紀末にエミール・クレペリンによって精神障害が分類されるようになってからになります。精神科は当初は統合失調症などの精神病を主な対象としていましたが、そして徐々に統合失調症や躁うつ病、うつ病、認知症などの疾患だけでなく、新しい概念を作りながら、発達障害などの従来には治療対象をしていなかった疾患にまで診断や治療、研究の対象を広げています。今後も疾患の概念が広がって、さらに精神医学の対象とする範囲も広がっていくかもしれません。
成り立ちから考えると「心療内科」と「精神科」では大きく異なるものの、 精神医学の治療対象の広がりによって、現在では心療内科と守備範囲がかなり重なり合うようになってきていますが、クリニックの標榜科という点では見方が変わります。それは何かというと、やはり「精神科」の古いイメージがまだまだ残っているということです。年配の方ではこの傾向が強く、精神科を看板に掲げることによって、受診の敷居がとても高くなり、敬遠されてしまう方が多くおられます。
そのため、当院は軽症の方でも早い段階で受診しやすいように「精神科」をあえて掲げておりません。「精神科を標榜していなから大丈夫かな。ちゃんと診断や治療をしてくれるのかな。」と心配せず、このような意図をご理解いただければと思います。当院は漢方内科も併設しておりますので、小さな不調からでも心配なさらずにご相談ください。