ADHD治療薬について:各薬剤の特徴と使い分け
心理教育や環境調整を行っても日常生活に困難が続く場合には、薬物療法を検討します。
現在、成人期のADHD治療において選択肢となる薬剤は、大きく分けて「精神刺激薬」と「非精神刺激薬」の2グループがあります。
1,精神刺激薬(コンサータ・ビバンセ)
脳内のドパミンやノルアドレナリンの働きをダイレクトに活性化させる薬剤です。効果発現が非常に早く、服用したその日から高い改善効果を実感できるのが特徴です。
①コンサータ(メチルフェニデート徐放錠)
脳内のドパミン・ノルアドレナリンの再取り込みを阻害することで、脳内の濃度を高めます。
不注意、多動・衝動性を抑え、落ち着いた行動や集中力の維持を助けます。効果持続時間は約12時間で、昼間の活動時間帯をカバーします。
②ビバンセ(リスデキサンフェタミン)
成分自体に活性がない「プロドラッグ」という形態の薬剤です。
体内に吸収された後、赤血球によって徐々に活性体に変換されるため、血中濃度が緩やかに上昇し、効果が約14時間と長く持続するのが特徴です。
コンサータで十分な効果が得られない場合や、効果の「切れ際」のイライラ(リバウンド)が強い場合に検討されます。
※日本では現在、18歳未満で服用を開始した患者さんのみ継続使用が可能という公的な制限があります(成人期からの新規導入は現時点では適応外となります)。
精神刺激薬には注意点があります。
脳の興奮性を高めるため、副作用として食欲低下、不眠、動悸、血圧上昇などが見られることがあります。
また、不安を強めたり躁状態を惹起する可能性があるため、双極性障害や不安障害を併存している場合には慎重な判断が必要です。
依存性のリスクを適切に管理するため、流通管理システムへの登録が必要であり、登録された医師・薬局のみが取り扱える規制が敷かれています。
2,非精神刺激薬(ストラテラ・インチュニブ)
精神刺激薬のような依存性のリスクはなく、24時間にわたる穏やかな効果が期待できます。精神刺激薬よりも効果の実感までに時間はかかりますが、日常のベースラインを底上げするイメージの薬剤です。
①ストラテラ(アトモキセチン)
ノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、前頭前野の機能を改善させます。
効果が出るまでに2〜4週間程度の継続が必要ですが、24時間効果が持続するため、朝の準備や夜の家庭生活での困りごとにも有効です。
コンサータと異なり、不安障害や双極性障害の併存があっても比較的使いやすい薬剤です。主な副作用は、飲み始めの吐き気や腹痛などの消化器症状、眠気、口渇などです。
②インチュニブ(グアンファシン)
後シナプスのα2Aアドレナリン受容体に直接作用し、神経伝達を強化することで、多動性や衝動性、感情のコントロールに高い効果を発揮します。
こちらも終日効果が持続します。
副作用として、血圧低下や眠気、徐脈が現れやすいため、血圧が低い方には注意が必要です。
飲み始めの眠気は2〜4週間ほどで慣れることが多いため、まずは少量から開始し、体調を見ながら調整していきます。
まとめとなりますが、ADHDの治療薬にはそれぞれ一長一短があります。
「仕事中だけ集中したいのか、家庭での生活全般を安定させたいのか」
「併存する精神疾患はあるか」
「血圧や食欲などの身体状態はどうか」といった多角的な視点から、患者さんお一人おひとりに最適な処方を提案いたします。
当院はコンサータ・ビバンセの登録処方施設ですので、それぞれの薬剤のメリット・デメリットを丁寧にご説明した上で、治療方針を共に決定していければと考えております。

