定期採血について
定期採血についていくつかご意見をいただいたので、ここで説明させてもらうことにしました。
当院では、当然ながら必要性がない血液検査は行っておりません。
比較的頻度の多い血液検査ということは、定期採血を要する薬剤を服用されていたのではないかと推測します。
定期的に採血が必要な薬剤はいくつかありますが、最も注意を要するのがリチウムです。
リチウムは、双極性障害の躁状態にもうつ状態にも用いられ、数種類の他剤が無効な場合にもリチウムへの切り替えによって病状改善が得られるケースは多くあり、双極性障害の治療において欠かすことのできない代表的な治療薬になります。
しかし、難点があります。
それは、薬剤の治療用量と中毒用量と近接していることです。
そのため、下記資料にあるように、血中濃度と副作用の確認のために、定期的採血を行わないといけません。
投与初期や増量中には1週間に1回、用量が変わらない維持期は 2~3 か月に 1 回をめどに血液検査を行うことが推奨されています。
リチウム中毒(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000842885.pdf
リチウム添付文書
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065672.pdf
他院に通院されており、リチウムを長らく服用しているのに、一度も採血をしたことがないという方がたまにおられます。
血中濃度を確認せずに、十分量のリチウムを投与することは非常に危険です。
それだけでなく、治療域に満たない低用量のリチウムでは、そもそも効果が期待できません。
治療域に入っているか、中毒域になっていないか、副作用がないかなどを採血で定期的にチェックをしないと、適切な治療ができません。
また、医薬品副作用被害救済制度というものがあります。
重篤な健康被害が出た場合に、医療費や年金などの給付を行う公的な制度です。
ただし、 薬剤を 「ルールに従って正しく」 使用していた場合の制度ですので、
必要な検査を行わないなど、不適切な薬剤使用をしている場合には、この救済制度が受けられないことがありますので、注意が必要です。
PMDA(医薬品医療機器総合機構)による医薬品副作用被害救済制度
https://www.pmda.go.jp/kenkouhigai_camp/
以上いくつかの理由から、当院では安全に安心して治療を受けていただくために、リチウム投与中は定期的な採血を行っております。
リチウム以外の気分安定薬や一部の漢方薬でも、副作用が出やすい薬剤については、リチウムほどの頻度ではありませんが、安全のために定期的に採血を行っております。
採血が苦手な方、あるいはしたくない方は、我慢せずに率直にお伝えください。
ちゃんと伝えていただければ、無理に採血を行うことは絶対にありません。
定期採血を要する薬剤を中止して、ご希望にできるだけ沿って、代替できる治療法を検討いたします。