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強迫性障害の治療における「森田療法」の知恵:不安と共に生きる、あるがままの姿勢

  

  
今回は、当院の診療において大切にしている心理療法の一つ、「森田療法」についてお話しします。

    
強迫性障害(強迫症)に悩む方にとって、なぜこの日本独自の治療法が有用であり、かつ継続しやすいのか。専門的な知見を交えながら解説いたします。

  

  

1,強迫性障害における「森田療法」の位置づけ
  

強迫性障害の治療は、薬物療法と心理療法を「車の両輪」として進めるのが一般的です。

   

心理療法としては、欧米で発達した「認知行動療法(CBT)」が有名ですが、それと並んで、日本で100年以上の歴史を持つ「森田療法」が、近年国内外で高く再評価されています。

   

  
• 認知行動療法: 「不合理な考えや行動を修正・コントロールする」アプローチ

    
• 森田療法: 「湧き上がる不安やこだわりをコントロールしようとせず、そのまま(あるがまま)にしておく」アプローチ
    

どちらかが優れているわけではなく、患者さんの性格や症状のフェーズに合わせて使い分けたり、組み合わせて用いたりすることが、治療の質を高める鍵となります。

  

  

2,「とらわれ」の悪循環を解き明かす

  

  
森田療法では、強迫症状の本質を「思想の矛盾」と「精神交互作用」による「とらわれ」であると考えます。

  

   
• 精神交互作用(悪循環のメカニズム)

  
「鍵を閉め忘れたかも」「手が汚れているかも」という不安は、誰の心にも浮かぶ自然な現象です。

  

しかし、これを「あってはならないもの」として排除しようとすると、意識はより一層その不安に集中し、感覚はさらに過敏になります。

   

注意すればするほど不安が肥大化する、この心理的メカニズムが「とらわれ」の正体です。

    

        
• 思想の矛盾(理想と現実のギャップ)

    
「絶対に安全でなければならない」「完璧に清潔でなければならない」という高い理想(思想)と、不確実な現実との間で板挟みになり、身動きが取れなくなっている状態を指します。

    

  

・「生の欲望」:不安の裏にあるエネルギー

   
森田療法の最大の強みは、不安を「排除すべき敵」ではなく、「より良く生きたいという強い願い(生の欲望)」の裏返しとして肯定的に捉える点です。

     
「失敗したくない」「病気になりたくない」という不安が強いということは、それだけ「責任を持って仕事がしたい」「健康に生きたい」というエネルギーが人一倍強いことを意味します。

   

   
治療の目標は、不安をゼロにすることではありません。

    

不安や違和感を「心の一隅に置いたまま」、今目の前にある生活や仕事(目的)に身体を動かしていくことです。

  

行動に没頭するプロセスの中で、結果として強迫症状は生活を邪魔しない程度へと無力化していきます。

  

   

3,なぜ森田療法は「続けやすい」のか

   
心理療法において、治療のハードルの高さによるドロップアウト(中断)は大きな課題です。

   

森田療法が「優しいアプローチ」と言われる理由がここにあります。

 

      
• 無理な「直面」を強いない

  
認知行動療法の標準的な手法である「曝露反応妨害法(ERP)」は、あえて不安な状況に身を置き、強迫行為を我慢するため、一時的に強い精神的負荷がかかります。

   

  
• 生活に寄り添う「行動本位」

   
一方で森田療法は、感情のコントロールという不毛な戦いをまず「休戦」させます。

   

「不安なままでも、まずは身の回りの家事や仕事をこなそう」という、人間の自然な感情の流れに逆らわないアプローチをとります。

   

心理的抵抗が少なく、日常生活の中で実践しやすいため、治療の脱落率が低いことと言われいます。

   

   

    

   


     
強迫症状に苦しむ方は、本来、人一倍の向上心や繊細な責任感をお持ちです。

   

森田療法は、その素晴らしいエネルギーを、病気との戦いから「本来の豊かな人生」へと方向づけし直す知恵です。

   

    
「確認作業で一日が終わってしまう」「不安で何も手につかない」と一人で悩まないでください。

    

その苦しみを抱えたままで構いません。

    

あなたの「より良く生きたい」という力を一緒に引き出していきましょう。

   

      

当院では、診察での森田療法的指導に加え、グループ森田療法を保険適応のショートケアにて行っております。

      

ご興味がある方は是非医師あるいはスタッフにご相談ください。