ADHD治療薬について
心理教育や環境調整などを行っても、日常生活に困難が続く場合には、薬物療法を検討します。
成人期の薬物療法には、精神刺激薬であるコンサータ(メチルフェニデート徐放錠)、非精神刺激薬であるストラテラ(アトモキセチン)、インチュニブ(グアンファシン)を用います。
精神刺激薬のコンサータ(メチルフェニデート徐放錠)は、脳内のドパミンとノルアドレナリンの働きを活性化させ、不注意、多動・衝動性を抑えて落ち着きのある行動がとれるようになり、自分の行動に注意を払えるようになります。しかし、その一方で、脳の興奮を高めるため、不安を強めたり、躁状態を惹起する可能性があり、双極性障害や不安障害には使いにくい薬剤になります。他の副作用としては、頭痛や腹痛、食欲低下(主に昼食)があります。効果は、大体半日程度で、終日は効きません。そのため、双極性障害や不安障害がなく、学校や職場での困り感が強く、昼間だけの効果が続けばよい場合には、このコンサータ(メチルフェニデート(徐放錠)を使用することになります。
なお、精神刺激薬は依存性のリスクがあるため、システムへの患者登録が必要で、処方医師と調剤できる薬局を許可制にするといった流通規制が敷かれています(当院ではコンサータ処方が可能です)。
非精神刺激薬には、ストラテラ(アトモキセチン)、インチュニブ(グアンファシン)があり、終日にわたる効果が期待できますが、一般的に精神刺激薬よりも効果はマイルドになります。
ストラテラ(アトモキセチン)は、脳内のノルアドレナリンとドパミンの濃度を上昇させ、前頭前野の機能を改善させることで、不注意、衝動性、多動性を改善します。効くまでに、2週間から4週間ほどの時間がかかります。終日効果が持続するので、昼間だけでなく家庭生活や睡眠の問題があるときには、よく使われます。副作用としては、鎮静、消化器症状、頻脈、血圧上昇などが起こることがあります。コンサータとは違って、不安障害や双極性障害が併存している場合にも問題なく使えます。
インチュニブ(グアンファシン)は、α2Aアドレナリン受容体に作用し、交感神経の過剰な働きを抑え、神経の緊張を取り去る効果を持ち、多動性や衝動性、感情面に効果があります。終日効果が持続するので、ストラテラと同様に、昼間だけでなく、家での困り感も強い場合に使用されます。副作用としては、鎮静、眠気、血圧低下などの副作用が起こることがあります。アトモキセチンほど効果が出るのに時間はかかりません。副作用の眠気は、飲み初めに強く出ることがあるため、慣れるまで(大体2~4週間)は我慢して続けてみましょうとアドバイスしています。