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社交不安障害(SAD)ってなに?

社交不安障害(SAD)とは、不安障害の一種で、人に見られている場面で何かをすることを過剰に恐れてしまう病気です。昔であれば、対人恐怖、視線恐怖、あがり症、赤面症と言われていたような状態のことを指します。

 

人前で喋ったり、字を書いたり、食事をしたり、会議で発表したり意見を言う、大勢での食事で会話する、上司やあまり面識のない人との会話する、試験や仕事の面接を受ける、人が大勢いるところで電話に出る、などの場面で、「恥をかくなど自分が恥ずかしい思いをするのではないか」と非常に心配してしまい、その結果、顔がひきつったり、赤くなったり、ドキドキしたり、汗をかいたり、手が震えたりします。 

腹痛下痢、嘔気などの消化器症状が強く現れる方もいます。過敏性腸症候群の背景に、強い社交不安症が隠れていることも結構あります。

このような症状が続くと、「人前になるとまた症状が出てしまうのではないか」という恐怖が強くなってしまい、実際そのような状況になると、案の定「なんか動悸がしてきた。前みたいに声が震えるんじゃないか、またうまくしゃべれないんじゃないか」と不安が助長され、自分をどんどん追い込んでしまいます。

 

このような悪循環が続くと、人が集まる場所を避けるようになります。ひどい場合には、学校や仕事に行けないなどの社会生活に大きな支障を抱えてしまうこともあるので、注意が必要です。

 

 

 

ADHD(注意欠陥多動性障害)の診断治療

当院では、医師の診察でADHDが疑われる場合、90~120分間程の時間を要する心理検査を組み合わせて、診断を行っています。心理検査の予約は混みあっていますので、診断までに時間を要しますのでご了承ください。

 

ADHDの治療は、行動の改善を図り、対処法を身につけることとともに、薬物療法も治療の選択肢になります(当院ではコンサータ処方も可能です)。

 

関連記事:ADHD(注意欠陥多動性障害)の症状ADHDで見られやすいWAIS-Ⅳの所見ADHDにおける幼少期のエピソードついて対人関係のトラブルにおけるASDのADHDの違い

ADHD(注意欠陥多動性障害)の症状

ADHD(注意欠陥多動性障害)は、

 

「注意を持続するのが難しい」「ケアレスミスが多い」「片づけが苦手・忘れ物が多い」などの不注意症状と、

  

「目的のない動きをする」「感情が不安定になりやすい」「過度なおしゃべりや不用意な発言」などの多動性・衝動性に特徴付けられる発達障害の一つです。

 

・物事を行なうにあたって、難所は乗り越えたのに、詰めが甘くて仕上げるのが難しいことがよくある
 

・計画性を要する作業を行なう際に、作業を順序だてるのが難しいことがよくある
 

・約束や、しなければならない用事を忘れることがよくある
 

・じっくりと考える必要のある課題に取り掛かるのを避けたり、遅らせたりすることがよくある
 

・長時間座っていなければならない時に、手足をそわそわと動かしたり、もぞもぞしたりすることがよくある

 
・まるで何かに駆り立てられるかのように過度に活動的になったり、何かせずにいられなくなることがよくある

 

上記が4項目以上当てはまる場合はADHDが疑われます。これらの症状によって、社会生活や日常生活で支障を来たしている方は受診を検討されるとよいでしょう。

  

関連記事:ADHD(注意欠陥多動性障害)の診断治療ADHDで見られやすいWAIS-Ⅳの所見ADHDにおける幼少期のエピソードついて対人関係のトラブルにおけるASDのADHDの違い

 

定期採血について

   

定期採血についていくつかご意見をいただいたので、ここで説明させてもらうことにしました。

  

当院では、当然ながら必要性がない血液検査は行っておりません。

  

比較的頻度の多い血液検査ということは、定期採血を要する薬剤を服用されていたのではないかと推測します。

    

      

定期的に採血が必要な薬剤はいくつかありますが、最も注意を要するのがリチウムです。

   

リチウムは、双極性障害の躁状態にもうつ状態にも用いられ、数種類の他剤が無効な場合にもリチウムへの切り替えによって病状改善が得られるケースは多くあり、双極性障害の治療において欠かすことのできない代表的な治療薬になります。

   

しかし、難点があります。

  

それは、薬剤の治療用量と中毒用量と近接していることです。

   

そのため、下記資料にあるように、血中濃度と副作用の確認のために、定期的採血を行わないといけません。

   

投与初期や増量中には1週間に1回、用量が変わらない維持期は 2~3 か月に 1 回をめどに血液検査を行うことが推奨されています。

    

    

リチウム中毒(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000842885.pdf

    

リチウム添付文書
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065672.pdf

    

     

       

他院に通院されており、リチウムを長らく服用しているのに、一度も採血をしたことがないという方がたまにおられます。

   

血中濃度を確認せずに、十分量のリチウムを投与することは非常に危険です。

   

それだけでなく、治療域に満たない低用量のリチウムでは、そもそも効果が期待できません。

  

治療域に入っているか、中毒域になっていないか、副作用がないかなどを採血で定期的にチェックをしないと、適切な治療ができません。

     

    

   

   

また、医薬品副作用被害救済制度というものがあります。

  

重篤な健康被害が出た場合に、医療費や年金などの給付を行う公的な制度です。

  

ただし、 薬剤を 「ルールに従って正しく」 使用していた場合の制度ですので、

 

必要な検査を行わないなど、不適切な薬剤使用をしている場合には、この救済制度が受けられないことがありますので、注意が必要です。

      

PMDA(医薬品医療機器総合機構)による医薬品副作用被害救済制度
https://www.pmda.go.jp/kenkouhigai_camp/

     

    

    

   

以上いくつかの理由から、当院では安全に安心して治療を受けていただくために、リチウム投与中は定期的な採血を行っております。

    

リチウム以外の気分安定薬や一部の漢方薬でも、副作用が出やすい薬剤については、リチウムほどの頻度ではありませんが、安全のために定期的に採血を行っております。

       

     

採血が苦手な方、あるいはしたくない方は、我慢せずに率直にお伝えください。

   

ちゃんと伝えていただければ、無理に採血を行うことは絶対にありません。

   

定期採血を要する薬剤を中止して、ご希望にできるだけ沿って、代替できる治療法を検討いたします。

     

PMS/PMDDについて③

次に、薬物療法についてです。

症状が中等症以上の場合には、薬物療法が必要になることが多くあります。

① 低用量ピル(OC-LEP)

低用量ピルによって排卵が起こらないようにすることで、エストロゲンとプロゲステロンの変動がなくなり、月経前の不快な症状が改善します。 嘔気や倦怠感、体重増加などの副作用が生じることがあります。

② 抗うつ薬(SSRI)

精神症状が強い場合には、抗うつ薬の中でもSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を使用します。SSRIは脳内のセロトニンの濃度を高める作用があるため、卵巣ホルモンの変動によって生じる、気分の落ち込みやイライラ感などを改善が期待できます。また、プロゲステロンの合成体の活性化を高める働きもあるので、抗不安作用もあります。

SSRIは投与初期に嘔気が出やすいですが、それ以外の副作用はそれほどなく、依存性はないため、比較的安心して服用ができます。

私の経験的でいうと、SSRIの用量は、ほかの疾患(うつ病、強迫性障害、パニック障害など)よりも低用量で効果がみられることが多いという印象です。

また、排卵日頃から月経までの2週間だけSSRIを服用し、うまくいくケースもあります。毎日服用が心配な方や症状が比較的軽い場合には、月経前だけの服用を勧めたりします。


③ 漢方薬 

低用量ピルやSSRIが副作用で飲めない、SSRIに抵抗があって飲みたくない、精神症状がそこまで重症でない、などの場合には、漢方薬を使います。

精神症状だけでなく、月経関連の身体症状が強い場合にも、漢方を提案します。SSRIと漢方薬を併用するケースも結構あります。

PMDDでよく使う漢方薬には、加味帰脾湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、桂枝加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、女神散、黄連解毒湯、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、桃核承気湯、四物湯、九味檳榔湯、通導散、芎帰調血飲第一加減等があります。一剤で治療することありますが、合方と言って、複数の漢方薬を重ねて使うことも多くあります。

主となる訴えだけでなく、周辺の症状をお聞きして、ある程度の方剤を絞りこんでから、腹診や脈診、ときに舌診を行い、方剤を決定します。

事前の予想通りの漢方的身体所見が得られれば、迷うことなく漢方薬を選択できますが、そういったケースばかりでもないため、問診と、身体所見に解離がある場合には、どちらを優先するかは、個別で判断していきます。

 

関連記事:PMS/PMDDについて①PMS/PMDDについて②PMSとPMDDの治療について

PMS/PMDDについて②

続いて、PMS/PMDDの非薬物療法についてです。

 PMSとPMDDの治療にあたって、まず本当に月経の周期に一致しているのかを確認する必要があります。

 できれば症状の記録をつけていただき、そのパターンを把握します。

 そうして、本当に月経前の症状だと確認できたら、治療を行っていきます。

 軽症から中等症の程度までの場合は、生活改善指導による効果が期待できます。

 夜更かしや偏った食事などの生活習慣を続けていると、PMSやPMDDの症状が悪化することもありますので、 規則正しい睡眠、バランスの良い食事、適度な運動を心がけることが必要です。

 飲酒、喫煙、カフェイン、精製糖を制限することが有効なこともあります。

 月経周期が規則正しい場合には、月経前を穏やかに過ごすために、前もって月経前付近に予定を入れないようにしてみるのもよいでしょう。

 また、ストレスが多い環境にいる場合には、日ごろから辛くて苦しい感情を言葉にして話すこともとても大事です。

 心理社会的ストレスによって症状が悪化することがしばしばあるので、抱えている心理的な悩みを整理するために、心理療法(カウンセリング)の実施が有効なこともあります。

 月経前の不調ある方は、生活を振り返ってみて、改善できることを少しずつからでもやってみてください。

 

関連記事:PMS/PMDDについて①PMS/PMDDについて③PMSとPMDDの治療について

PMS/PMDDについて①

 当院では漢方治療を積極的に行っているため、月経前の不調で困ってらっしゃる方が多くお見えになります。

 そのため、PMS(月経前症候群)とPMDD(月経前不快気分障害)について説明していきたいと思います。

 PMS/PMDDの症状出現の明確なメカニズムはわかっていませんが、卵巣ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の変動が関与していると言われています。

 排卵から月経発来までの黄体期の期間に、卵巣ホルモンは多く分泌されますが、黄体期の後半になってくると卵巣ホルモンは急激に減少します。それによって、精神症状が出現することがわかってきています。

 エストロゲンは、脳内のセロトニン受容体の数を増加させたり、セロトニン活性を調節します。セロトニンは気分の調節に関与し、気持ちを安定させる作用があるため、エストロゲンが黄体後期に急激に減少することによって、情緒や気分に影響を及ぼすと言われています。

 また、プロゲステロンの代謝産物も大きく関わっていると指摘されています。プロゲステロンの代謝産物は、脳内においてGABAA受容体に結合して、抗不安作用を示します。プロゲステロンの黄体期後期の急激な減少によって、この代謝産物も同じく急激に低下するため、抗不安作用が減弱し、強い不安感などの情緒面の不調を引き起こすと言われています。

 加えて、心理社会的なストレスや生活習慣もホルモンの乱れに関与すると言われています。

 PMSとPMDDによる精神症状が起こるのは、エストロゲンと、プロゲステロンの代謝産物の変動によるわけですが、ストレスや生活習慣によってホルモンバランスが乱れて、月経前の症状が悪化することもありますので、注意が必要です。

 

関連記事:PMS/PMDDについて②PMS/PMDDについて③PMSとPMDDの治療について

本当に寝れていない?

 

 必要な睡眠時間というのは、年齢とともに減少していきます。

 そのため、若いころのように寝れなくなったといっても、それは生理的に正常であることがあります。

 睡眠時間の大体の目安です。

 25歳・・・7.0時間

 45歳・・・6.5時間

 65歳・・・6.0時間

 85歳・・・5.5時間

 あくまでも目安であるため、適正な睡眠時間は個人差はありますが、加齢によって睡眠時間が減少してくるの事実は変わりません。

 ご高齢の方は、自分の求める睡眠時間と生理的に必要な睡眠時間との間にミスマッチが起こりやすくなります。

 

   

関連記事:不眠とその原因について眠気と睡眠のリズムについて

眠気と睡眠のリズムについて

 今日は、眠気と睡眠のリズムについて、簡単に説明します。説明には、二過程モデルというものを用います。

 

 まずは、概日リズム、いわゆる体内時計について触れます。

 この概日リズムは、睡眠と覚醒の制御において非常に重要なものです。

 概日リズムは、サーカディアンリズムとも言い、サーカ(約=概)とディアン(1日=24時間)をつなげたもので、約24時間リズムという意味です。

 この概日リズムは、外部の明暗環境が一定でも、大体24時間に保たれます。脳の中の視交叉上核というところがこの体内時計を調節し、光で調整されます。この視交叉上核の一つ一つの細胞に時計があることがわかり、今では体のどの細胞にもこの時計があることがわかっています。

 この概日リズムによる眠気は、昼過ぎに小さな山ががあり、その後眠気はなくなり、夕方にまた小さいな山があり、寝る頃に大きな山がきて、朝までその山が続きます。そして、朝起きると、眠気はなくなり、また昼過ぎに小さな山があり、、、、と毎日繰り返されます。

 概日リズムは朝にリセットする必要があるので、朝日を毎朝ちゃんと浴びることが重要になります。

 朝に起き、夜の程よい時間に寝ることができている人は、この体内時計が保たれているということです。

 しかし、昼まで寝ることを繰り返していると、体内時計がずれてしまいます。とくに、遮光カーテンを閉めきって寝ていると、体内時計はずれやすくなります。

 昼間まで寝ていたとしても、日光が入る部屋であれば、瞼を通して光が少しでも入っていれば、概日リズムはずれにくいと言われています。

 睡眠と覚醒のリズムに関して、もう一つ重要なのものは、睡眠負債です。

 睡眠負債というのは、文字の通り、睡眠の借金です。

 覚醒している状態が続くと、睡眠の借金は徐々に増えていきます。

 「寝だめ」という言葉があります。しかし、実際には睡眠を貯めておくことはできず、マイナスになった睡眠の借金を返済することしかできません。

 概日リズムの眠気に加えて、睡眠負債による眠気が溜まってきて、夜の眠気が出てきます。

 言い換えると、実際に感じる眠気は、先に述べた概日リズムによる眠気と睡眠負債による眠気を足し合わせたものということです。

 徹夜明けでも頭がスッキリと起きてくるのは、朝になって睡眠負債は積み重なっていくにもかかわらず、概日リズムによる眠気がなくなるからです。

 時差ぼけも、このモデルで説明できます。

 この二過程モデルは、眠気の細かな複雑な変化を説明できない難点はあるようですし、情動の影響による眠気の減少などは無視していますが、大まかな説明はできると言われています。

 

 睡眠で困った際には、今回の話をイメージしてみると、解決策がわかることもあるかもしれません。

 もちろん、睡眠や精神の病気による睡眠障害は、このモデルでは説明できまませんので、生活は規則正しくしているけれども、睡眠がとれないというときには相談していただければと思います。

  

関連記事:不眠とその原因について本当に寝れていない?

軽躁状態ってどんなの?

 

 私は、うつ状態でお見えになった方には、必ず「頭も体も軽くて、頑張り過ぎていた時期はないですか?」と聞きます。

 もし「ない」とおっしゃっても、うつ状態が典型的ではない場合には、

  • 「寝る時間を惜しんで、何かに没頭していた時期はありますか?」
  • 「次々とアイデアが浮かんで、過活動していた時期はありませんか」
  • 「友達にテンションが高くて、心配されたことはないですか?」
  • 「何でもできるように感じて、爽快に動き回っていた時期はないですか?」

などと表現を変えて、確認します。

 

 いろいろな確認の仕方をしても、軽躁状態は見つけられないことがあります。

 それは、軽躁状態というのは、双極性障害の方にとって、本来の状態(本調子)だと思っておられることが多いからです。

 そのため、いくら聞いても「そんなことはない」ということになります。

 周りの人の方が、よっぽどその人のことをよくわかっていることもあるので、同伴された家族や友人に聞いてみて、初めて軽躁状態が発覚することもあります。

 

 なぜこれを知りたいかというと、うつ状態の方の中に、双極性障害の方が一定の割合で混じっているからです。

 双極性障害は上記のような理由から見逃されやすく、うつ病の治療を始めて、数年経ってから、躁状態や軽躁状態をきっかけに、ようやく診断が双極性障害に切り替わることも多くあります。

 

 治療についてはどうかというと、うつ病のうつ状態と、双極性障害のうつ状態とで、もちろん治療法が異なります。

 うつ病は、新規抗うつ薬(SSRI、SNRI、Nassa)をメインで使いますが、双極性障害では、気分安定作用のある薬(クエチアピン、オランザピン、リチウム、ラモトリギンなど)を用います。

 うつ病と双極性障害では治療薬が異なるため、診断がとても重要になります。治療が違っていると、当然良好な経過は得られません。

 

 うつ状態の方が受診される場合には、自身の若い頃から気分の浮き沈むがなかったかを振り返ってみたり、家族や友人に過去にテンションが高い時期がなかったかについて聞いてきたりしてみてください。

 診断の助けになりますので、大変助かります。

 今回は、軽躁状態と双極性障害について触れ、受診の際のお願いを最後に付け加えさせてもらいました。参考になれば幸いです。